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第5話
廉の友情とは違う『好き!』に返事をはぐらかしたまま、廉もあれから特に迫って来ることもなく、何日か過ぎた。
「よっしー!ラーメン食ってこーぜ!」
部活の終わりに、副主将の安東が声をかけてきた。
商店街のラーメン屋がリニューアルオープンし、開店記念にラーメン一杯半額セールをやっているらしい。腹ペコな部員4人でラーメン屋に繰り出した。
リフォームして店内は以前より広くなっていたが、誘蛾灯に群がる蛾のように半額ラーメンに引き寄せられた客でごった返していた。ラーメン以外は特に目を惹く割引も無いというのに、ラーメンにつられて餃子だのチャーハンだのも次々と注文され、店主の高笑いが聞こえてくるようだ。
「お、柔道部」
安東の言葉に顔を向けると、店の奥のブースに廉が3人の部員とともに座っていた。
ひらひらと廉が手を振るのでそちらに寄っていくと、タイミングよく廉たちの手前の席が空いた。席に着くと、水を持ってきた店員にラーメンや餃子を注文した。ラーメンが出てくるまでの時間潰しに、部員たちはマガジンラックからマンガ雑誌を取ってくるとカラーグラビアのページを開いた。
そこには、大きなおっぱいに対してあまりにも小さなビキニを身につけて、寄せたり上げたりしているかわいい女の子が何人もいて、やりたい盛りの野郎どもの股間を大いに刺激してくる。この子は1組のマリナに似ているとか、こっちは胸は無いがお尻がエロいとか、みんなでワイワイ騒いでいると、隣りのブースから視線を感じた。恐る恐る顔を向けると、案の定、廉がムッとした顔でこちらを睨んでいた。
「やべ…」
思わずつぶやいた言葉に気付いた安東が、廉の方を見た。不機嫌そうな廉と目が合ったらしく、安東も眉間にしわを寄せた。
剣道部と柔道部は武道系の部活として、何かと比べられることが多い。最近は成績的にずっと柔道部に負けっぱなしで、副主将の安東を筆頭に柔道部とは関係が良好とは言えなかった。
「てめえ!広川!ガンくれてんだ⁉︎なんか文句でもあんのか!」
「ああん?おめえなんか見てねえ!」
安東と廉が立ち上がった。廉の不機嫌な原因に思い当たる節がありすぎて、めんどくせえと思いながらも、放っておくわけにもいかず、安東をなだめにかかった。
「こらこら、店の中だぜ。いい加減にしろよ」
廉は廉で、柔道部の冷静な部員たちに諌められて、ちょっとへこんでいるようだった。
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