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第6話

そうこうしている間に廉たちにラーメンが届き、こちらもまた雑誌を見たりスマホをいじったりして、あっと言う間に騒ぎは収まった。自分のせいで揉め事が起きるという、なんとも居心地の悪いことが大ごとにならなくて良かったと、密かに胸を撫で下ろした。 ラーメンを食べ終わり店を出た。コンビニに寄るという部員たちと別れてひとり帰路に着いたが、ひとつ目の角を曲がったところに案の定、人影があった。 「廉」 「うん」 柔道部の仲間たちと先に店を出ていった廉が、すがっていた壁からムクリと身体を起こすと、きまり悪げに頬を掻いた。 「ったく、変に騒いでんじゃねえよ」 「…って」 廉が口を尖らせ、小さい声で何か言っている。 「うん?聞こえねえよ」 「だって、慶生が女の写真なんか嬉しそうに見てるから…!」 そんなことだろうとは思っていたが、実際言葉になると想像以上に薄ら寒い感じがした。 「そりゃ見るさ!おっぱいだぜ?プルプルの!!」 両手を胸に当てそう言うと、廉は悲しそうな、悔しそうな表情を浮かべた。 「お、俺にだって!」 廉にいきなり手をつかまれ、奴の胸に押し当てられた。夏服のシャツ越しに触った廉の胸は筋肉が発達し、確かに胸の小さい女子よりは膨れているくらいだった。 「まあ、あるっちゃあるけど…」 「そうだろ!」 目を輝かせた廉に、まことに残念なことを知らせた。 「硬い。プルプルも、プニプニもしてねえ」 「ええ!?」 「当たり前だ!男の胸なんて、筋肉の塊じゃんか。ほらっ」 なぜか悲痛な叫び声をあげて絶望している廉の片手を、俺の胸に当ててやった。途端に、廉はこちらが恥ずかしくなるほど見る間に赤くなった。そんな純情そうな様子を見せながら、押し当てられた手は、シャツの上からワシワシと胸を揉んだ。 「こらこら、野郎の胸揉んでも面白くねえだろ」 だが、廉は止めようとしない。それどころかもう一方の手も出してきて、両胸に触ってきた。 「慶生!すごく良いよ!!」 両胸を揉まれて、一瞬何か説明出来ない感覚に襲われた。廉と同じように短く刈った髪の毛が逆立つようなその感覚に慌てて、 「バカヤロウ!!」 思わず、廉の頭にグーパンチをかましてしまった。

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