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第19話
「この、大嘘つき」
ピザの切れ端を廉の口に押し込みながら睨むと、廉は口をもぐもぐさせながら眉毛を八の字に下げた。
「慶生はエッチしたことないだろ?俺は経験者だから、たぶんお前より上手い」
屈辱的な廉の言葉に、カーッと頭に血が上り憤然と身体を起こした。だが、その瞬間、尻の方が鈍く痛んだ。
「痛ってえ…!」
悶絶していると、廉が腕を伸ばしてきて優しく抱き直し、またソファーに横になった。そして髪を手で梳いてくれ、口もとに付いていたらしいチーズのかけらを舐めとって、幸せそうに言った。
「次はもっと良くなるよ。俺も頑張るから」
「…次も俺に突っ込むつもりか?」
「うん、ごめんね」
口では殊勝にごめんと誤っているが、全然悪いと思ってないことは、緩んだ顔を見ればバレバレだ。
好きだと思った時からずっと妄想していたことを、とうとう今日実践してみて、実のところどうだったのか、思っていたのと違ったりしたんじゃないのか、と、本当は廉に聞いてみたかった。
女の子のように柔らかいところもなく、身体の中も本来そのように出来ている訳ではない。女の子を何度も抱いたことのある廉に、ちょっと違うとガッカリされていたのでは、怖くて痛い思いをした俺があまりに可哀想だ。
だが、嵐のようにセックスしたあと、腕の中に包み込むように抱きかかえ、俺の身体のあちこちをそっと撫でたりキスしたりしている廉の手の平や唇からは、愛情と満足感しか伝わってこなかった。
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