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Serenity 13

「だったら……指、抜いて……っ」  滑りが良くなったソコは、さっきよりも質量が増している。きっと指の本数を増やされた。 「こっちでイケたら抜いてやる」 「無理だって! 今すぐ抜けって……あぁ……!?」  コリっと指が何かに触れた瞬間、佑月の背中は弓なりに反った。 (な、なんだ今の……)  あまりにも強すぎる刺激に、佑月は一瞬息をするのを忘れた。 「ここがお前のいいところだ」  指がソコに触れるだけで頭の芯が痺れるよう。 「あぁ……やぁ……」  こんな感覚は初めてだった。  射精感とはまた違う感覚だが、イキたくてイキたくて仕方ない。 「イヤだ……そこ、やめ……お願いっ」  大きな渦に巻き込まれ、どれだけ足掻いても深い快感の波に飲み込まれていく。 ──助けてくれ……おかしくなりそうで怖い……。 「やめて……あ……やめ」  自我が崩壊しそうで、佑月は足はシーツを蹴り、頭を振ってそれに耐えようとする。  生理的な涙は溢れ、口からは絶えず悲鳴のような矯声がこぼれていた。  そして佑月の鈴口からは先走りの蜜が溢れ、それが潤滑油の代わりとなっているのか、指の滑りも良くなり卑猥な水音が更に大きくなっていた。一点を重点的に責められ、その指も激しくなっていく。 「ひ……ぁ……須藤……」 「やらないって言った手前、我慢するが……結構くるな……」  何か須藤がこぼしていたが、そんな声さえも耳に入らない程に、佑月は深いマグマのような悦楽に溺れきっていた。  須藤のキスにも、発散する捌け口を塞がれた気がして、引き剥がそうと必死にもがく。 ──もう……限界だ。壊れる……。 「イケ、佑月」 「あぁぁ!」  佑月の目の前がスパークする。  一瞬意識が飛び、全身がまるで自分のものではない感覚までする。今のは一体なんだったのか。 「初めてにしては上出来だ。今のがドライオーガズムだ。言葉くらい知ってるだろ」 「はぁはぁ……ドライ……んん……」  息も整わない内に、須藤は唇を重ねて舌を絡ませてきた。もう抵抗する気力のない佑月はされるがままだ。  ドライオーガズム……大学時代、誰か言っていたの聞いたことがある。射精せずにイクことらしいが。まさか、ここまでとは……。  名残惜しそうに唇を離していく須藤を、佑月はぼんやりと視点が定まらない目で追った。 「それ以上俺を煽るな」 「え……?」  絶頂の余韻が凄すぎて、頭の回転が上手く回らない。  そんな佑月の様子に須藤は苦笑して「何でもない」と言って、佑月の髪をぐしゃぐしゃにして撫で回した。 「シャワー浴びてくるか?」  汗をいっぱいかいたし浴びたいが、今のがとどめだったのか、動くことが億劫で佑月は緩く首を振った。 「……今すぐはムリだし、後でお借りしてもいいですか?」 「それは別に構わないが。なんなら俺が洗ってやるが?」 「い、いいです!」  ニヤニヤした須藤に背を向けて、佑月は頭からシーツを被った。ククと喉の奥で笑う声が聞こえる。  そんな須藤を余所に、佑月はなんの答えももらえなかった上に、ほだされ、流されたことに頭を抱えていた。 (一体何やってるんだ俺は)  もう、全てを須藤のせいには出来ない。与えられる快楽に抗えなかったのは佑月自身だ。自己嫌悪に陥りながら、佑月はいつの間にか意識を手離していた──。

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