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Change

◇  (もや)がかかる頭の中で、何か単調なメロディが流れ込んでくる。  まだ眠いんだから寝かせてくれと、佑月はシーツを頭から被って音を遮断しようとした。  だが、やけにしつこく鳴り響く音。 「んん……うるさいな……」  音の発信源を探すように枕元に手を滑らせるが、何か違和感があった。 「ん? なんかめちゃくちゃ手触りがいい……」  そこで佑月は一気に眠気が吹っ飛び、飛び起きた。 「うわっ……てか、おもっ」  飛び起きたはいいが、余りにも重怠い身体に辟易(へきえき)とする。 「そうだった……。ここは須藤のマンションだ」  その須藤と昨日……と、物思いにふけっていると、さっきから煩い音の発信源が佑月の目に入った。 「俺の……スマホ?」  枕元にスマホだけが置いてあり、ベッドにも、部屋にも須藤の姿がなかった。  一向に鳴りやまないスマホを手に持ち、佑月は画面を見て首を傾げながら通話をタップした。 「……はい」 『やっと出たか。その様子だとゆっくり寝れたみたいだな』  何故か部屋の主からの電話で、佑月はワケが分からず辺りをキョロキョロと見渡した。  そして自分が、あのシルクのパジャマを身に付けているのが分かった。  須藤がわざわざ着せてくれたらしい。しかもシーツも新しい。その須藤から、なぜ電話が。 「あれ……今どこですか?」 『仕事で出てる。悪いな、一人にして』 「いえ、そうだったんですね……」  時間を確認すると八時を過ぎたころ。普段の佑月ならまだ夢の中だ。  須藤は昨日、佑月のせいで仕事も抜けてきたはず。それがフロントか裏かは知らないが、邪魔したことには変わりない。  それなのに、何時に須藤がここを出て行ったのかも分からず、呑気に寝ていた自分にアホかと言いたい。  確かにムリな事をしたのは須藤だが、助けてもらった恩があるというのに。  沈む佑月に気付いたかは知らないが、須藤は「なんだお前、低血圧か?」と軽い口調で訊いてきた。 「ち、違います! ……たぶん」 『フ、なんだそれ。まぁどうせお前、今日は仕事休む気はないんだろ?』  その確信めいた問いに、佑月は直ぐに「もちろん」と即答した。  須藤は呆れたような笑い声を電話越しに聞かせてくるが、不思議と苛立つことはなかった。  むしろ、ホッとして安心したというか。 そんな自分の中の変化に佑月は少し驚いた。 『俺としては今日くらい仕事休めと言いたいんだがな。今から一時間後に真山を迎えに寄越す。それまでに準備しておけ』 「そんな、わざわざいいです。真山さんも仕事があるでしょうから。一人で帰ります」 『駄目だ。今日くらい言うことを聞け。真山もそれを仕事として与えているから、心配するな。後、お前の着替えはソファに置いてある』 「ちょっと待って」  佑月の制止を聞かず、須藤は一方的に電話を切る。軽く溜め息を吐いて、佑月は重い身体に鞭を打ってベッドから降りた。  そしてソファの背もたれに掛けてある物を見て、目が点になる。確か昨日須藤は、貸す服はないみたいな事を言っていた。 「やられた……」  明らかに佑月のために新調したと分かるスーツ一式。恐る恐るスーツを手に持って掲げて見た。

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