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《Background》 4

「僕はいつだって貴方一筋だってこと、知ってるでしょ?」  徐々に縮まる距離に、須藤はリアンを押し遣る。 「そうだったか?」 「酷いですね。ずっと口説いてるのに須藤さん全然落ちてくれないですし。いつになったら抱いてくれるんです?」 「無駄な期待はするな」  軽い調子でリアンは言うが、リアンが須藤に本気で惚れていることは、この世界では周知のことだった。故に、所構わずアプローチしてくるリアンに、須藤は辟易としていた。 「僕の何がお気に召さないんですか? 容姿なら須藤さんの好みのはず」 「自分で言う辺りがお前らしいな」 「だってそうでしょ? 僕なら貴方を満足させてあげられるのに」 「ほう、俺を満足させるとは、随分と上から物を言うようになったな」  扉へと向かう須藤を、リアンは慌ててその手首を掴んだ。 「なんだ」 「すみません。でも、やってみないと分からない事もあるでしょ?」 「そうだな。だが、仕事以外でお前と関わるつもりはない」  離せと須藤が目で言うと、リアンは渋々と手を離していった。 「噂の子に随分とご執心らしいですけど、僕は諦めませんから」  怒りを買うと分かっていたが、リアンはつい口をついてしまった。噂の子に対しての嫉妬心が抑えられなくなっていたからだ。  案の定、須藤の怒りを買い、その鋭利な目にリアンは冷や汗を流した。 「リアン。俺の事を良く知っているなら分かってるはずだ」 「……」  その目に射抜かれリアンは息を呑む。 「俺の邪魔をするなら、誰であろうと叩き潰す」  目を見開くリアンに須藤は身体を寄せ「分かったな」と耳元で囁く。  ゾクリと全身が震えた。それは恐怖と快感から。脅しつけるセリフにも関わらず、まるで恋人に囁くかのように、須藤は甘い音色を響かせてきた。リアンを黙らせるにはこの対照的な方法が効く。案の定、黙ったリアンを見て、須藤は身を翻すと、直ぐに部下と共に出て行った。 「あは……今のでイケそう……」  身体は恐怖で震えているのに、ジンジンと熱くなる下肢に、リアンは手を伸ばしていった。

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