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《Background》 5
ベルトを外し、ジーンズのジッパーを下ろして中のモノを取り出したリアンは、ゆるゆるとそれを扱いていく。
「く……やっぱり、あの人には……全てを見透かされてる……あ……」
決して須藤を侮っていたワケではない。そんな大それた事をリアンに出来るワケがない。
だが、それ以上に自分の感情が優先されていたのだ。
くちくちと粘着質な音と、リアンの喘ぐ息遣いが誰もいなくなった部屋に響く。
「桐山さん怒ってる? せっかく協力したのにって……。でもね、こうして熱くなるのは、あの人にだけなんだよね……」
まだ耳に残る須藤の声が、まるで抱かれているかのような感覚になっていく。
「あぁ……須藤……さん」
親指で先端をくるくると撫でるだけで、鈴口から蜜が溢れ、ポタポタと床を濡らしていった。須藤の大きく美しい手に扱かれる想像の中で、その手の動きが激しくなっていく。
「あぁ……う……」
白濁液が飛び散る床。
「はぁはぁ……」
そこは桐山が殺され倒れていた場所。リアンは手に付いた精液を舐めとってから、その口角を上げた。
「ほんと……無念だったよね。犯すことも出来ずに逝っちゃうなんて」
哀れみの目を向けながらも、喉の奥で笑い声をもらす。
「ほんと残念だったよ」
スッと一瞬で無表情になったリアンは、舌打ち混じりに呟いた。
須藤の取引相手だった松山を殺したのも、今回の〝絵を画いた〟のも全てリアンがしたこと。
桐山を利用して、円滑に佑月をレイプするには、須藤の佑月に会う時間を奪う必要があった。そうと知ってもなお、須藤がリアンを見逃したのは、何も昔馴染みのリアンだったからではない。公言しているように、須藤は誰であろうと容赦はしない。それなのに何も制裁がないワケは……。
成海 佑月。
彼の存在が大きな理由だった。その事を承知しているリアンだからこその、須藤からの警告だった。それほどに大切な存在だと知らしめる為に。
「面白くないよね……」
そう呟きを残してリアンは部屋を後にした──。
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