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ジェラシー 2

 颯は、この持ち前の明るさとルックスの良さで、No.1の座にいて、誰にもその席を譲ったことがない。そのカリスマ性に、ホスト特集がテレビで組まれるときは、局から出演をお願いされるほどだ。 「いつも言ってるけど、あまり無茶な飲み方するなよ? それだけが心配だ」  颯にはいつもコーヒーではなく、ホットミルクを出す。 「サンキュ。大丈夫。自分の限界はちゃんと分かってるしさ。それにユヅには心配掛けたくねぇし」  あちこち跳ねさせ、いかにもホストらしく盛った髪型。誰が見ても男前だと言えるその顔に、良く似合ってる。  颯は自分の隣をポンポンと叩いて佑月を呼ぶ。佑月は素直に颯の隣に腰を下ろした。 「それならいいんだけど。俺の所へ来るときは、大概疲れてる時だろ?」 「まぁな……でも、こうやってユヅの顔見に来て、癒してもらうと、また頑張れるんだよな」  そう言うと、颯は徐にゴロンと横になり、佑月の膝に頭を乗せた。 「俺で癒しになるとか……。早く彼女作ったらいいだろ」 「バカ。今はお客様が彼女なんだぞ? それにほら、ホスト成り立ての時にさ、女いたじゃん? 色々大変だったのユヅも知ってるだろ」 「あぁ……」  あまり煩く言う彼女じゃなかったが、一日に沢山掛かってくる客からの電話、同伴、時間が作れない。それらが溜まりに溜まって爆発したのだ。頭では仕事だと理解していても、そう簡単に割り切れないのが恋愛と言うものなんだと、颯はあの時言っていた。  だから、寂しい思いをさせると分かっていて、彼女など作れないと。 「そうだったな……。ごめん」 「あはは、何も謝ることじゃねぇじゃん。当分、女はいいかな」  颯は笑いながら佑月の髪をくしゃくしゃに撫でた。 「そっか……」 「だーから、暗くなるなって! そう言えばユヅこそ女は?」 「お、女?」  何故かそこで、佑月はおもいっきり動揺してしまう。そんな佑月を下から覗いてるような状態の颯には、もちろん隠せるわけがない。 「お、その反応はいるな! つうか、出来たなんてオレは何も聞いてねぇぞ!?」  ガバッと起き上がると、颯は佑月の肩に腕を回し、顔を近付ける。 「ちょっと待てよ。誰もいるなんて言ってないだろ? 渚と別れてからは誰とも付き合ってないよ。そ、それより今日は同伴とかないのか?」  颯を押し退けると、颯は諦めたように佑月の膝に頭を戻した。  女はいないが、逆に佑月が今、須藤からまるで女のような扱いを受けている。 「同伴ならあるけど……ってユヅ、お前なんか顔赤くねぇか? やぱ、なんか隠してんだろ!」 「か、隠してないって!」  再び起き上がろうとする颯を、佑月はそうはさせるかと押さえ付ける。 「いーや、今ギクッてしただろ! そんな艶っぽい顔して否定されてもな」 「艶って何ワケわか──」 「何してる」 「え?」  この場にいるはずのない第三者の低い声が聞こえて、一瞬客かと颯は慌てて起き上がり、佑月は姿勢を正した。

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