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ジェラシー 3
しかし就業時間はとっくに過ぎている。ならば、この聞き覚えの有りすぎる声は。二人揃って、同時に恐る恐ると入り口へと後ろに振り返った。
その先にいたのは。
「……これはどうもです。何かご用ですか?」
無理やりな笑顔を貼り付けて、佑月がソファから立ち上がると、眼鏡を掛けた無表情の真山が軽く頭を下げてきた。
須藤はと言うと、佑月の事務的な対応が気に食わないといった顔で、眉間に深いシワを寄せている。
(あーあ、せっかくの美貌が台無しだぞ。いつか俺にも言われたセリフをそのまま返してやるよ)
「てか、え? なんで?」
颯が急にそわそわと落ち着かない様子で、佑月と須藤の顔を見比べている。
「どうしたんだ? 颯」
「成海。そいつは誰だ」
佑月は颯に質問しているのに、須藤が割り込む。
「誰って……。友達ですよ」
「友達?」
須藤は不機嫌丸出しの顔で佑月の手首を掴むと、自身に引き寄せた。
「おわっ!?」
つんのめった佑月を抱き寄せて、挙げ句腰など抱いてくるものだから、焦った佑月は必死に須藤を押し遣った。
「ちょっ、何するんですか……」
相変わらずびくともしない身体。
颯が勘違いするではないかと、気ばかりが焦る。
「なぁユヅ……その人って、す、須藤さんだろ? なんで……」
「え……? 知ってるの?」
ぐいぐいと須藤を押しながらも、佑月は驚きで目を見開いてしまう。
「知ってるのってそりゃ……この世界にいたらな……」
「あ……そっか」
そうだ。佑月よりも、颯の方が須藤のことを知っているのかもしれない。
「で? どういう……関係?」
颯は佑月の腰に巻き付いている須藤の腕と、佑月の顔を交互に見て困惑顔。
「見て分からないのか? 俺の──」
「俺の依頼客だったんだよ!」
咄嗟に須藤の口を手で塞ぐ。
(おい、何をサラッと、とんでもない事を口走ろうとしてくれちゃってるんだ! 油断も隙もあったもんじゃない)
「依頼客?」
ムスッとした顔で佑月の手を剥がし、須藤が抗議してくる。
「そ、そうでしょ? 実際依頼したことあるんだし」
佑月が言い返すと、その鋭い目でジロリと睨んでくるが、ちょうどいいタイミングで誰かのスマホの着信音が部屋に響いた。
「あ、オレのだ」
颯は素早くスマホをポケットから出して、直ぐに耳に当てた。
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