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ジェラシー 4
「あ、友伽里ちゃん? うん、うん」
仕事モードさながらの颯の甘い声を聞きながら、佑月はどうにか須藤を引き剥がして自分の机に戻ろうとした。
「ユヅ、悪い。もう行くわ。またゆっくり話そうぜ」
チラリと須藤に目を遣る颯。
きっと今度会うときは、根掘り葉掘りと訊かれるだろう。気が重くなりながらも、佑月は事務所のドアを開けに向かう。
「……うん、そうだな。今日はわざわざありがとな。仕事頑張って」
「おう、ありがと。じゃあな」
須藤に軽く頭を下げてから、颯は慌ただしく出ていった。
ドアを閉めると、急に空気が重くなる部屋。それに気付かないふりをして佑月は自分の机に再び戻ろうとしたが、須藤に腕を掴まれた。
「何ですか? 離してください」
「仕事は終わったんだろ? なら、行くぞ」
「行くって? すみませんが、書類の片付けがまだなので──」
「そんなもの明日でも出来るだろ」
「何勝手言ってんだよ。って、ちょっとちょっと!」
須藤は佑月のデスクから鞄を取ると、佑月を引っ張りながら、外へと連れ出す。その様子を見た真山は一足先に階下へと降りて行った。
佑月はこれ見よがしに、大きな溜め息を吐いてやった。
「はぁ……本当、勝手ですよね」
「今更だな」
「……」
(何が今更だよ)
反省なんて言葉が頭にないであろう須藤を少し睨んでから、佑月は仕方なく事務所の鍵を閉めた。
外に出たが、ビルの前に横付けされている車を見て佑月は首を傾げた。真山が開けた後部座席に須藤が乗り込むのを見ていると、真山が怪訝そうに佑月を見やる。
「どうかなさいましたか?」
「え? あ、いえ……車がいつもと違いますね」
いつも須藤が乗っている車は、あのベンツSクラスよりも上だと言われている、超高級車マイバッハ。
それが今日はBMW。佑月がどれだけ頑張っても手が出せない物ばかりだ。
「ええ、実は修理に出してまして」
「そうなんですか。どこか故障でも?」
「おい、何してる。早く乗れ」
中で王様が痺れを切らしてるようだ。
真山が佑月に軽く頭を下げて、乗るよう促す。佑月は軽く息をついてから乗り込んだ。
(そんな五分も話し込んでるわけでもないのに。せっかちは嫌われるぞ?)
「そう言えば、最近お暇なんですか?」
だから佑月はちょっと嫌味を込めて言った。
「暇ではないな。お前と一緒にするな」
軽くジャブを決められ、見事に返り討ちに遭う。
「……なら、最近よく頻繁に顔を出すのは何でですか」
あのレイプ事件の前までは水曜日だけだったはずが、あれから須藤は水曜日どころか、多くて週に三回は事務所に来るようになった。
「自分のオンナに会いに来るのに理由がいるのか?」
「お、女!? 俺は男だ。女扱いすんなよ」
女扱いされているのは分かっている。だが、実際本人の口から聞くのは結構頭にくるものがあった。
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