113 / 444

ジェラシー 5

「そんなに怒るな。言葉のあやだろ。それとも恋人と言った方が良かったか?」  佑月の手首を掴むと、須藤は強引に引き寄せ、腕の中に閉じ込める。 「言葉のあやって……。そ、そもそもあんたの恋人じゃないんですが」 「いい加減、早く受け入れろ」 「む、無理だって」  そんな押し問答を車内でしていたが、佑月はあっという間に須藤の部屋のベッドへと押し倒されていた。  あれ以降、二度目の部屋。 「無理じゃないだろ?」  須藤は佑月に跨がった状態で、スーツの上着を脱ぎ捨てる。  須藤が前に言っていたように、本当に嫌なら付いて来なくていい話。それなのに、佑月は今ベッドの上にいる。  須藤に歯向かうのが、怖いからだけじゃなくなってる証拠ではないのか。  そんなことを思い悩んでる佑月を余所に、須藤は流れる動作で、佑月のスーツのボタンを外していく。 「ちょっと待っ……」  その手を阻もうとするが、それよりも早くワイシャツのボタンまで外されてしまう。そしてその手は佑月の白い肌を滑っていく。  ビクリと反応してしまい顔を逸らすが、直ぐに顎を掴まれ正面へと戻されてしまう。 「これならお前は拒まない」  須藤は啄むように軽く唇を重ねてくる。 「それは──」  ペロリと唇を舐められ、佑月は思わず言葉を飲み込んだ。 「もう、思い出すこともなさそうだしな」  須藤は佑月の頬を撫で、囁くように言う。その須藤の言葉に、自分がすっかりそれを忘れていた事に気付いた。  〝ムカつく須藤〟のことで、頭をいっぱいにされたあの日から……。 「ええ、お陰様であんたの思惑通りですよ」 「俺のことで頭がいっぱいだってことか」  須藤は満足そうに口の端を上げると、そのまま佑月の首筋に唇を滑らせていく。 「っ……言っておきますけど、〝ムカつく〟が付きますけどね」  そう言ってやると、須藤は佑月の鎖骨に唇を落としながら笑った。  その擽ったさに佑月は身を捩りながら「あの人は……」と自然と口を開いていた。  須藤はそんな佑月の様子に愛撫をやめて、佑月を上から見下ろす。だが佑月は焦点が合わない目で、遠く眺めるようにして、須藤とは目を合わせなかった。 「俺を抱いたりはしなかった……」 「成海?」  須藤が心配そうに佑月の顔を覗き込む。 「それは分かりましたよね?」  ここで佑月は須藤と目を合わせた。  須藤は目が合ったその目を少し細めて「あぁ、そうだな」と佑月の隣へと横になる。 「お前に触れた時、キスの時のような拒絶反応がなかったからな」 「ええ……あの人は、俺の機が熟すのを待ってたから……」 「成海、俺が言い出した事だが、無理に話さなくてもいい」  須藤が気遣うように言うが、佑月はゆっくりと首を振った。  まだ誰にも、陸斗や海斗にさえも話した事がない嫌な過去。口にも出したくないもの。だけど、こんな話をして須藤が引くならそれでもいいんじゃないかと、佑月は口を開いていた。

書籍の購入

ともだちにシェアしよう!