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ジェラシー 8

「……くるし……いですよ」  佑月が少し涙目で抗議するように訴えると、何故か須藤の喉仏が上下するのが見えた。  なんだと思う暇もなく、須藤はまたしても佑月の唇を塞いできた。 「おぃ……んん!」  キスの激しさとは裏腹に、佑月の身体を這う手は優しく、ベルトを外すのも鮮やかだ。  佑月は必死で須藤を引き剥がそうと胸を強く押す。すると、須藤が舌打ちをしてきたため、佑月は少し頭にきた。 「……ちょっと……どうしたんですか? 苦しいって言ってるのに」 「お前が悪い」 「……た、確かにムカつくとか、調子に乗ったこと言いましたけど……」  もっと優しくと言いかけて、佑月は慌てて口をつぐんだ。 (何考えてるんだ俺) 「お前は本当に、自分がどれだけのもんか分かってないな」 「は? どういう意味ですか?」  眉を寄せる佑月に須藤はため息を吐く。 「お前はただ歩いてるだけでも、色気があるのは知ってるのか? すれ違う男どもがお前を見て欲情しているのを」 「はぁ!? そ、そんなバカな。そんなことあるワケないじゃないですか!」  歩いてるだけとは、まるで手当たり次第に佑月が男を誘惑しているみたいな言い方だ。   失礼な男だ。 「前に言ったよな。特にお前はもっと自分を知るべきだと」  言われなくても覚えてる。あのレイプ事件の時にも、頭に過ったくらいだ。だがそんなことを言っていたら、佑月は外も歩けない。 「言われましたけど、それとこれとでどう関係あるんですか? と言うか、何を怒ってるんですか」  ベッドから身体を起こした佑月が、ベルトをしめてからシャツのボタンを留めようとしたが、それを須藤が阻止をする。 「離して下さい」 「あの男」 「あの男?」  須藤がムッとしたように佑月を軽く睨む。 (一体なんだってんだよ) 「さっきの男だ」 「さっきのって颯のこと? それが?」 「お前にベタベタし過ぎなんじゃないのか?」 「ベタベタ……?」  確かに颯は誰よりもスキンシップが過剰なところがあるが、それは誰に対してでもそうだった。 「言っておきますけど、颯はゲイでもホモでもないですよ? 大学の時からの友達ですし」 「友達にあんな膝枕までしてやるのか?」 「膝枕……。でも、それも大学ん時からやってたことだし」 「大学からだと?」  凄むように唸りながら身体を少し起こす須藤に、佑月は逃げ腰になる。 「ちょ……何怒ってるんですか」  須藤が佑月の腰をグッと掴んできたため、少し怖くなって佑月は目をギュッと閉じた。

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