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ジェラシー 9

 殴られる、とは思わなかったが、体が痛みに備えて硬くなっていたところに、膝に軽い重みを感じた。恐る恐ると目を開けると、思わぬ光景に佑月は一瞬目を見開いてしまう。 「え……須藤さん……?」  佑月の膝に頭を乗せている須藤。 (ウソだろ?)  それを見て佑月は思わず笑いそうになってしまった。大の大人が男の膝枕なんて、滑稽過ぎるだろうと。でも不覚にも、須藤にも可愛いところがあるんだなと思ってしまった自分も、大概かもしれない。 「突然機嫌が悪くなった原因はこれですか。でも俺も頭にきてるんですからね。人をたらしみたいに言って」  軽く怒る佑月に須藤はくぐもった笑いをこぼす。 「ある意味それに近いだろ。お前にその気がなくても、自然と男を呼び寄せてる」 「なら、気を付けなきゃですね」 「そうだ」  当然という風に頷く須藤だが。 「それは須藤さんからも気を付けなきゃならないってことだし、そろそろ帰らせてもらいます」  なんてことを佑月が言うと、須藤は少し焦ったように顔を上げた。焦ったようにとは言っても、ほぼポーカーフェイスだし、顔色なんて変わらないが。  だが真顔で「ダメだ。俺を一緒にするな」と言う須藤に、佑月は笑いそうになる。 「何ですか、それ……ん……」  佑月の口を封じるように、須藤は身体を少し起こすと、佑月の頭を引き寄せ唇を重ねてきた。今度のキスは荒々しさはなく、甘く頭の芯が蕩けてしまうようなもの。  だが佑月はそのキスに、全て応えられるほどのスキルを持ち合わせてはいない。まだまだ拙すぎる。こんなキスをされたのでは、須藤と関係を持っている女性らは、さぞかし須藤という男に酔っているだろう。 「集中しろ。佑月」 「っ……ん」  下手だとかは決して言わない須藤だが、集中してないと直ぐに指摘をされてしまう。しかも、こんな時に名前を呼ぶのは反則だ。 「名前を呼ばれて感じたか?」 「なにっ……んん」  この男は何もかも鋭い。佑月の全てを見透かしてるのではないのかと思える程。現に名前を呼ばれて佑月の腰が疼いた。たかが名前なのにだ。  自然な動作で、ゆっくりとベッドへと倒されていく佑月の身体。やっぱりヤるのかと、ここまで来て心が追い付かないことに、どうしようかと身を硬くした時。  須藤はキスを解いて「心配するな」と佑月の耳にキスを落としながら言った。 「今日はさすがに最後まではやらない」  佑月を安心させるかのように、須藤は髪を優しく撫でる。だがあんな話をした後じゃ、さすがの須藤でも、抱く気にはなれないだけなのかもしれない。

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