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ジェラシー 10
抱かれる事に躊躇しているくせに、いざ引かれると戸惑う。自分の中に生まれる矛盾に苛立ちさえ覚えた。
「勘違いするなよ?」
「え?」
「強引に抱くことならいくらでも出来る。でもな、心に迷いがある時に抱かれても、エクスタシーなんてもんは一つも得られない。それではお前もつまらないだろ?」
ニヤリと口の端を僅かに上げる須藤に、佑月は驚きで目を見開いた。
やはり、この男には敵わない。心の奥底まで見透かされるのは本当はとても怖いことだし、敵には絶対に回したくない。
だがこういう場面でそれを察知し、気遣ってくれる須藤という人物に、佑月の警戒心が徐々に薄れていってるのは事実だった。
「俺にここまでお預け食らわせるなんて、俺の人生でお前が最初で最後だろうな」
「……すみません」
なぜか謝らなければならない雰囲気。
しかし実際、須藤が根底から最悪の人間であれば、佑月は既に犯されているだろう。
「次は必ず抱くからな。それがどういう意味か分かるな?」
須藤の真剣味を帯びた漆黒の目。
佑月はゴクリと唾を飲み、その目を見つめ返して頷いた。
分かっている。今度、こんな風に部屋に来ることなどがあった時は、言い訳など通用しないことは。そうなると分かっていて、付いてきたと見なすということだ。
その時が大きな試練でもあり、自分の気持ちもはっきりするはずだ。
須藤を受け入れられるのか、そうでないのかが──。
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