143 / 444

長い一夜 14

「い、いつから起きてたんですか?」 「お前が起きるより前にはな」  狸寝入りだろうと、佑月は口に出したかったが、須藤をじっと見ていたことをきっと突っ込まれる。そうなると、色々と面倒くさいからと佑月は口をつぐんだ。 「……と言うか、ちょっと熱いから離れてくださいよ」  そう言う佑月を、須藤は抱きしめるように引き寄せ、脚を絡ませてくる。 「身体はどうだ?」  人の話など聞いていない。 「めちゃくちゃ辛いですよ。痛いし」  未だに何か突っ込まれてような違和感と、入り口付近は腫れてる感じがするしで、 正直辛いものがあった。 「なら、今日くらい仕事休め」 「って、ちょっと何して……」  須藤は佑月の身体を自分の上に乗せて、尻を揉んでくる。お互い裸だから、お互いのモノが密着し合って、朝から刺激が強い。  離れたいのに、身体が重くて言うこともきかない。それを良く理解している須藤はやりたい放題だ。  だから過剰に反応しないように、佑月はスルーするしかない。 「こんな事で仕事休むワケにはいきませんよ。それより着替えたいんですが……」 「お前にはムードってものが欠如してるな」 「……」  朝から(さか)られたんじゃ、たまったものではないし、当然だろうと佑月は須藤を睨んだ。 須藤はその視線に呆れたように息を吐くと、佑月を抱えたまま身体を起こした。 「うわ……」  さすが鍛えてるだけはあるらしい。軽々としたものだ。 そして須藤は流れる動作で佑月にキスをすると、そのまま佑月を横に座らせてからベッドから抜けていく。 「って、ちょっと、ちょっと須藤さん……そこにバスローブあるんだし羽織ってくださいよ」 「何を今さら照れてる」 「べ、別に照れてませんよ」  スッと視線を逸らすと、須藤は面倒くさそうにしながらも、バスローブを羽織った。  均整の取れた肉体美は尻の形もいい……と思ってしまった自分に焦る。ガックリと佑月が項垂れてると、須藤は着替えを一式持って来た。 「下着から全部新しい物だ。お前のスーツはクローゼットにある。一応下着は洗濯して、そこに置いておいた」 「……え? 洗濯してくれたんですか?」 「あぁ。捨てた方が良かったか?」 「い、いえ、そうじゃなくて、須藤さんが洗濯?」 「俺以外誰がいる」  嘘だろと、目の前の背の高い男をじっと見上げた。悪いけど、どう見ても洗濯するような男には見えない。家庭的の〝か〟の文字すらも連想出来ないような男だ。そんな男が洗濯など、何の冗談なのか。 「お前は思ってる事が何でも顔に出るな」  須藤はそれが愉快だと言いたげに、口の端を上げながら、佑月の顎に手をかけて、顔を持ち上げてきた。 「だって……あんた程の人なら、お手伝いさんとかにやらせてそうだし」  セックスまでしたというのに、こうやって近付かれると、妙にどぎまぎとして目を合わせられない。まるで(うぶ)な中坊のようだった。

書籍の購入

ともだちにシェアしよう!