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Relationship 2
「それにしても、だるま屋の店長気前いいっすね~」
営業時間も終わり、事務所に帰って来た佑月らは、ソファにだらしなく座って、海斗が嬉しそうな声を上げる。
「だよね。一年間有効の生ビール一杯無料券! これは行かなきゃ損よね」
そう、佑月らはだるま屋の店長から一人一人に無料券をくれたのだ。なんでも想定以上の大繁盛ぶりが、ビラ配りの効果だとかなり喜んでくれ、依頼料とは別に気前のいいサービスをしてくれた。
「佑月先輩、また近々飲みに行きましょうよ」
「おう、そうだな」
陸斗の誘いに佑月はテンション高く答える。
「随分と嬉しそうだな」
少し不機嫌そうな低い声が突然、事務所内に響く。
相手の姿を確認しなくても、その声を聞いただけで誰だか分かる。そして佑月の心拍数は少し上がる。
「そりゃ、俺にだって嬉しい事くらいありますよ?」
須藤が来ると、陸斗らはソッと佑月らから離れていく。双子は面白くなさそうな顔はするが、最近ではもう何も言ってこない。
花に至っては、見守るような眼差しでキラキラと目を輝かせている。
三人にはどこまでかは分からないが、きっとなんとなく佑月らの関係が、前とは違うという事は勘づいているだろう。
関係と言っても本当のところ、明確な関係性を言えない。なぜなら、須藤の本心がどうなのか分からないから。
佑月は気まずさもあって、須藤の顔を見ないように、書類を片付ける為に、自分のデスクに戻った。その須藤はと言うと、ソファに腰を下ろして佑月を待つ。
真山は主の傍で控えていて、これもここ最近の習慣のようにもなっていた。
「佑月先輩、オレらはお先に失礼します! お疲れ様でした」
「あ、あぁ。お疲れ様。気を付けて」
「はーい」
元気な返事で三人が事務所から出ていった瞬間、部屋の空気が変わった。
須藤がゆっくりと腰を上げて、こちらに歩いてくる。佑月は気付かないふりをして、今日の依頼のまとめをパソコンに打ち込む。
だが意識はずっと須藤にあって、後ろに立たれるだけで心臓がヤバい程に早鐘を打つ。
「まだか?」
背後から覆い被さるようにデスクに片手を突き、須藤は耳元でわざわざ囁いてくる。
「ち、近い……。もうちょっと離れてくださいよ」
真山が見ているのではと、ソファ席に視線をやるが、姿が見えない。変なところで気を使わないでほしいものだ。
須藤は自分に都合の悪いことは聞こえないらしく、佑月の耳の後ろや首筋に唇を押し付けている。何だかんだで、須藤に触れられるだけで身体が熱くなって、呼吸が乱れてくる。
「須藤さん……早く終わって欲しいなら離れてくださいって。全然進まない……」
不満そうなため息を吐いて須藤は離れていく。別に触られるのがイヤなわけではない、決して。ただ所構わずだから困るだけだ。
中途半端に火がついた身体を宥めるべく、佑月はマッハで仕事を終わらせた。
「二人とも、いらっしゃい」
落ち着いて洗練されたピアノの音色が流れる店内。
bar【espoir】 のマスターの中村の笑顔に出迎えられ、佑月と須藤はいつものカウンター席に腰を落ち着かせた。
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