172 / 444
Relationship 6
「いつも送って頂きありがとうございます。ご馳走さまでした。それでは、おやすみなさい」
あれから五分くらいでアパートに着いた。
「真山さん、ありがとうございます」
わざわざ降りて見送ってくれる真山にも、いつもと同じようにお礼を言って佑月は頭を下げる。
──本当……いつも律儀な人だ。
「成海さん、お疲れ様です。おやすみなさいませ」
慇懃に頭を下げる真山に恐縮しながらも、佑月がアパートへ向かおうとした時、なぜか須藤が車から降りてくる。どうしたのかと思いながらも、佑月は須藤には構わず部屋へと向かう。
「真山。三十分で戻る」
「かしこまりました」
何故か佑月の元へと歩いてくる男。
「どうか……したんですか?」
「三十分しかない急ぐぞ」
「は? って、ちょっとちょっと!」
佑月の手首を掴んで、なぜだか須藤は部屋の前まで闊歩していく。
「早く開けろ」
「え? 何? 須藤さん、仕事でしょ?」
深夜のアパート。
日付は跨いでない時間とは言え、人通りも車通りもないから、小さな声でもよく響く。
「ちょっと茶を飲むだけだ」
「は、はぁ……」
(お茶……ねぇ)
首をかしげながらもアパートの鍵を開けて、須藤を中に入れる。
須藤が佑月の部屋に入るのは初めてだ。ちゃんと靴は脱いで、物珍しそうに部屋を見渡す男。違和感だらけだ。
「適当に座ってて下さい。コーヒーしかないですけど」
「そんなものいい」
「え? そんなものって……ッ!?」
やけに近くで声がすると思えば、須藤は佑月の背後に立っていたようで、そのまま抱きしめてきた。
「な、何? ちょっ……」
須藤の手は佑月の身体をまさぐり、右手はベルトを外して、スラックスの中へと入ってくる。
「っ……須藤さん、やめて下さい……。お茶飲むって言ったから……こんなことするなら早く戻って下さい」
「こんなこと? お前の身体を思って、週に一度と我慢してやってるというのに。お前を目の前にして我慢する身にもなってみろ」
「だからって……」
そう言われてみれば、確かに週に一度しか身体を重ねていないと思い至る。今日を逃したら、また一週間も待つことになると思っているのかもしれないが。
(まさか、それで夜に会うのは週一なのか?)
忙しい男だから時間を作れないということもあるだろうが、今の言葉を聞く限りでは、そう受け取れる。どうやら配慮してくれていたようだ。
だがここは須藤のバカ広いマンションとは違う。それに、さっきのあの車内での行為は一体何だったのか。急かされた上に恥ずかしい思いまでしたのに。
「見て分かる通り、ここの壁めちゃくちゃ薄いから……じゃなくて、そんなことより仕事大丈夫なん──っ」
話してる途中だと言うのに、佑月は顔を後ろに向けられ、須藤に口内を貪られる。
キスだけで佑月の身体が反応することをよく知っている須藤は、キスにじっくりと時間をかけてくる。
「さすがにここで声を我慢するなと言うのは酷だな。これでも咥えてろ」
「むぐ……」
いきなりハンカチらしき物を、佑月の口の中に突っ込んできた。おそらく須藤のもの。
佑月がハンカチを口から取ろうとすると、それを阻止されてしまう。
(まさか、本気でヤるのか?)
書籍の購入
ともだちにシェアしよう!