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Relationship 9
双子たちにも言ってない事実。颯が知ってるなら、双子たちも知っているかもしれない。
「その反応は、やっぱり本当だってことか?」
「……」
(もしかしなくても、鎌かけられたってやつ? 最悪)
「……誰から聞いたんだよ」
「誰からとかじゃなくてさ、勘。ほら、あの人昔から女が切れたことがなかっただろ? それがここ数ヵ月のうち、パタリとそれが無くなった。しかも盆の時期に須藤さんが珍しく仕事休んだって、ここらじゃ噂にもなってたし。なぁんとなく、オレとしては疑うワケよ」
「……」
黙る佑月に颯は軽く息を吐く。
「で、本当のところユヅと須藤さんはどういう関係なんだよ」
「どういう関係なんですか!」
静かに黙っていたはずの岩城までもが、颯に便乗してしまう。だが関係といっても、それは佑月が訊きたいくらいだった。
「ごめん、関係って言われても正直よく分からない……。それよりも、健二くん、最近どう? いいお客さん付いてる?」
「え!? オレですか?」
「うん」
自分でもどうかと思うわざとらしい話題転換。岩城が驚くのも無理ない。
(……ごめんな、颯)
男同士ということだけでも、打ち明けるには正直躊躇われる話。だがそれ以上に、今はまだちゃんとした関係が言えない。
女関係が今は止まっているというのは初耳だが、でも明日の未来でさえもどうなるか分からない相手なのだ……。
まだ何か言いたげに佑月を見ていた颯は、諦めたように軽く息を吐いている。
「オレはですね……って、そうそう! 兄貴に聞いて欲しかったんですよ! つい最近なんですけど、綺麗なお姉さんから指名貰えるようになったんですよ」
「そうか、凄いじゃないか」
「あー……あの、妙にエロイねえちゃんか」
颯はもう完全に追及することなく、佑月の振った話題に乗り、冷やかすように言う。
「エロイ……確かにエリカちゃん、いつも胸が大きく開いた服ばっかで目のやり場に困ります」
「お前、確実に狙われてるじゃん」
見られたくないなら、女の子もわざわざそんな服を着ないだろう。だからと言って、ジロジロと見れないのが男の性 だ。
「そうなんですよ! 実はこの間、エリカちゃんと同伴したとき、ホテルに行こうって、無理やり連れ込まれるところだったんです。あの時はビックリしましたよ」
「ビックリしたって……。断ったのか?」
颯は何とも愉快そうな顔で言う。一日体験しただけでは、まだまだホスト業界のことは分からない事が多い。
色恋、枕営業といったものがあるのは佑月も知っているが、そっちは佑月にはちょっと付いていけない世界だった。
岩城は颯の言葉に、少し気まずそうに首肯した。
「だって、オレ……そういうのは自信ないですし、出来ればしたくないです」
「まぁ、ケンらしいって言えばケンらしいけど、それでせっかく付いた客が離れる場合もあるしな。それがエースなら尚更痛いぞ?」
「はい……」
確かに岩城らしい。だがそういうホストがいてもいいのではないのかと、佑月は思った。
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