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Relationship 11

「ありがとう。ちゃんと整理出来たら、話聞いてほしい」 「おう。当たり前だ」  颯は佑月の肩を組むようにして、頭をぐしゃぐしゃに撫でる。そのせいで鳥の巣みたいな頭になっても、今日は黙っておこう。 「ちょっとお二人、なに陰でこそこそしてるんですか? 仲間に入れてくださいよ」 「あはは、ケン。お前もエリカちゃんに逃げられないよう頑張れよ」  颯は佑月にしたのと同じように、岩城の盛られた頭をぐしゃぐしゃに撫で回した。 「はい! 頑張ります」  せっかく綺麗にセットされている髪が台無しだ。だが本人は嬉しそうだしと、自然と佑月には笑みがこぼれていた──。 「黒衿会……ですか?」 「うん」  陸斗と佑月は、昼飯のカップ焼きそばの三分待ち。海斗と花は一緒に依頼で外出中だ。 「黒衿会は、あの原口組の直系って知ってましたよね?」 「うん、前に聞いたことある」  原口組は、日本人なら一度は耳にしたことはあるだろう程に、大きな組織のトップだ。 何かと世間を賑わして、原口組の系列も含め嫌でも名前を聞くほど。 「確か、原口組の若頭が黒衿会の会長だったよな?」 「そうです。その会長は渡辺って言うんですけど、昔から血の気が多い男だったらしいです。でも昨今は暴対法で大人しくせざるを得ない時代ですしね……。極道の世界にも頭脳が必要となってくるんです」  双子らは稼業を継ぐといったことには興味はないが、やはりよく勉強している。 「頭脳……インテリヤクザってやつだよな?」  佑月のセリフに陸斗は少し苦笑する。 「そうです。五年ほど前に黒衿会の若頭として新しく就いたのが、村山という男です。当時はまだ三十四歳という若さだっため、反発する者もいたんで、会長は村山に課題を与えたそうです」  課題。さすがに会長の一存では、若頭という地位は簡単には決められないようだ。 (それに、村山……どこかで聞いたような……) 「それを難なくこなして、皆が納得せざるを得ない状況を作ったんですよ、村山という男は」 「そ、そうか……」  佑月は思わずゴクリと唾を飲んだ。  猛者ばかりが集うヤクザの世界。そんな人間たちを黙らせるなど、相当頭がいいのか、カリスマ性があるということだ。  颯たちの世界は、一歩間違うとそんな危険な人間が絡んでくるのだ。佑月もある意味、危険な人間と絡んでしまっているが、今さら後には戻れないし、戻るつもりもない。 「佑月先輩、その黒衿会がどうかしたんですか?」  湯切りでシンクに熱湯が落ちると、その熱さを訴えるように音がなる。本当はやってはいけない事だと分かっているが、ついついやってしまう。 「昨日、颯らと会った時に、六本木のホストクラブが去年そこに潰されたって聞いたものだから、ちょっと気になって」 「そう言えばそんなことありましたね……。出来ればウチも関わりたくない所ですね」 「そうだよな……そんなことがない事を願うよ」  正厘会と黒衿会が争うことになれば、陸斗たちも無事では済まない。それだけは避けて欲しいものだ。切実に。 「話ありがとう。とりあえず食うか?」 「はい!」  村山のことが気に掛かったが、暗くなりかけた雰囲気を変えるべく、佑月は陸斗と焼きそばを食べながら、テレビの話題で盛り上がった。 ──だが世の中は、そう都合よく回らないのが世の常だったりするのだ……。

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