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Darkcloud 3
「そろそろ戻る」
「うん。無理だけはしないようにお願いします」
「あぁ、分かってる」
ドアへと向かう須藤を見送るために、佑月も付いていく。すると、ドアを開けた須藤が何かを思い出したかのように、佑月に振り返ってきた。
「……どうしました?」
忘れ物なんてないはずだしと、佑月が首を傾げていると、須藤はフッと口元に笑みを浮かべた。
「香港から帰って来たら、何処か行くか? 朝から出掛けて、一日一緒に居るのも悪くないだろ?」
思わぬ言葉に佑月は直ぐには信じられず、呆然と須藤の顔を見る。そんな佑月へ須藤は手を伸ばして、頬に触れてきた。
「どうした? 都合つかないか?」
「え、いや……俺じゃなくて、須藤さんですよ。時間作れるんですか?」
「それは問題ない。今日から詰め込めばなんとかなるからな」
「詰め込むって……やっぱり無理するんじゃないか」
少し怒った口調になってしまった佑月を、慰めるように須藤は親指で頬をスルスルと撫でる。
「無理などしない。とにかく、そうだな……来月六日辺り俺の依頼として空けておけ」
(そうか……香港から帰って来る時は月を跨いでるのか)
「……分かりました。空けておきます」
佑月の返事を聞いた須藤は満足そうに口角を上げてから、仕事へと戻って行った。
「これって完璧に公私混同だよな。みんなにはまたご飯でもご馳走してやらないと……」
須藤と一日ゆっくり会えるのは、あの盆休み以来だと佑月はふと思った。そして忙しいのに、自分のために時間を空けてくれる事が、素直に嬉しく思う。
まるで恋人同士のようだと──。
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