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Darkcloud 7
〝町村〟だった。
目が合うと、ニヤリとご満悦な顔を見せられ、佑月は直ぐに目を逸らした。
本名かどうかは知らないが、今の町村の格好は眼鏡もなく、昨日とは打って変わって、しっくりときた。いかにも筋者だという出で立ちだからだ。どうりで昨日、少し違和感があったワケだと、佑月は一人納得した。
今さら悔いても仕方ないが、陸斗らが昨日あの場にいてくれたら、直ぐに感じ取ってくれていたかもしれない。いや、もしかしたら佑月が一人になるタイミングを待ってたのかもしれないが。
ここで反抗するのは得策とは言えない為、佑月は仕方なくソファへと腰を下ろした。
「ご用件は何ですか? 依頼が目的ではないんでしょ?」
「状況の飲み込みが早くて助かる」
男は丁寧な言葉を使うことをやめてきた。
そして、そのセリフ自体も佑月を馬鹿にしているのがよく分かった。
「しかし、想像以上だな。噂では聞いていたが、ここまでとはな……。美しい男だと思わないか?」
偉そうでちょっと腹が立つから、メガネと呼んでやると、佑月は内心で毒づいた。そのメガネのセリフに「ヤバいですね」と色めき立つ男たちに、佑月は嫌悪感でいっぱいになる。
「男なんて全く興味ないですけど、これ程までのべっぴんなら余裕でイケますね」
一人の声に賛同し、盛り上がる男たちだが、佑月の気分は更に落ちていく。興味ないなら、そのままその意志を貫いて欲しいものだ。
外野の舐めるような視線に悪寒が走りつつも、目の前のメガネの冷淡な視線に、佑月は唾を飲んでいた。
「さて、無駄話はこの辺にして、本題に入るとするか」
「……」
なぜかメガネの目付きが、佑月個人に向けられているような気がした。そう……何か憎悪のようなもの。
また知らぬ内に恨みを買っているのかもしれないが、その知らぬ内というものが本当に怖いと思う瞬間だ。特にこんな厄介なヤクザなんかには……。
「単刀直入に言おう。須藤 仁から手を引け」
「え……?」
まるで予想もしていなかった言葉に、佑月は頭の中で須藤の名を反芻していた。
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