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Darkcloud 11
「さて、どうする。お前の返事によっては友人二人の運命が決まる。二人を消すことくらい簡単に出来るってことだけは覚えておけ」
命令だと言っておきながら、こうやって選択肢を与える。どこまでも反吐が出そうな人間だ。だが、颯や岩城を巻き込むことだけは、避けなければならない。
あの二人を守れるのは、今は佑月だけだということだ。それに、きっと二人だけではなくて、陸斗らにも影響を及ぼすことになるだろうから。
佑月は目をギュッと閉じ、深く息を吐いた。
(須藤さん……ごめん。あんたとの約束守れなくなった。本当に、ごめんなさい……)
「……分かりました。須藤さんとは、もう会いません。だから、どうか二人は……」
目の前にいるメガネに、佑月は半ば項垂れるように深く頭を下げた。
「賢明な判断だな。安心しろ。お前がちゃんと実行すれば、奴らには手を出さない。余計な火種は出来ればまきたくないからな。だが、須藤と切れてなかったり、下手な真似をした時は問答無用に殺る。分かったな」
「はい……」
それから佑月は直ぐに解放された。
ボタンがほぼ飛んでしまったワイシャツ。スーツの上着も羽織ることしか出来ず、頬も腫れた惨めな姿。
じろじろと通行人に見られはしたが、そんな視線も今は構ってられるほど、佑月には余裕がなかった。
「もしもし、陸斗? 今大丈夫か? あのさ、俺ちょっと急用が出来たから、このまま直帰するな」
『そうなんですか? 分かりました。みんなには伝えておきます』
「悪いな」
『いえ! お疲れ様でした!』
「あぁ、お疲れ様」
我ながら上手く会話が出来たと佑月は一人安堵する。例え殴られていなかったとしても、怪我も上手く隠せたとしても、これが面と向かってなら、きっと直ぐにバレていただろう。
今の佑月は上手く笑える自信がなかったから……。
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