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Darkcloud 12

 佑月は帰りに薬局へ寄って、ガーゼと火傷に効く軟膏を購入した。アパートに着くなりTシャツを脱ぎ捨て、火傷の痕を見た。そして佑月は眉を寄せる。 「結構酷いな……水ぶくれになったら最悪だ……」  もう遅いが、一応氷水で三十分ほど冷やして、軟膏を塗ってガーゼを貼った。その間、佑月は何度も重いため息を吐いた。  須藤が綺麗だと言ってくれた肌は、もう無い。左の脇腹には十ヵ所近くの煙草の痕がある。乳首の方は固まった血がこべりついていた。 「もう……見せることもないけどな……」  メガネが出した条件。須藤が香港から帰ってくるのは来月四日。その日に電話で関係を切ることを伝え、会うことは一切許さないと言った。 「その日は何処かに身を潜めないとな……」  その前に、上手く言えるだろうか。言えたとしても、須藤が簡単に引くとは思えない。どこから来る自信だ、と佑月自身でも思うが、今はまだ自分に執着をしていることを肌で感じているからだ。 「俺……須藤を忘れられるんだろうか……。自信ないや……」 ──こんなことなら、好きだなんて気付きたくなかった……。  佑月はこの時もずっと、自分だけが傷付いた気でいた──。 「おはよう」 「あ、おはようございます!」 「遅くなってごめんね」  自分の机に向かう佑月に双子は付いてくる。 「遅くないですよ。まだ就業時間じゃないですし。オレらはたまたま早く来ただけです」  佑月は椅子に腰を下ろして、パソコンを立ち上げる。 「そっか。昨日は悪かったね……」 「いえ……。と言うか佑月先輩、その右頬どうしたんです?」 「本当だ。なんか少し腫れてますね」  陸斗と海斗は途端に心配そうな顔になる。佑月は心配掛けまいと、照れたような笑顔を見せた。 「あ、これね? いやぁ……恥ずかしいから言いたくないんだけど」 「えー? なんすか? めっちゃ気になる!」  興味津々といったように、さっきの表情から一変する双子に、佑月は内心ホッと息を吐いた。 「イヤです。絶対に言わない」 「あー、分かった! 転けたんでしょ! そしてぶつけたとか?」  海斗がポンっと手を叩いて、可笑しそうに言うため、佑月がわざとムッとした表情を見せると、二人は途端にばつが悪そうな顔になった。 「えーと……今日の依頼は何だっけ?」 「あー……確か今日は、おばあちゃんの薬の受け取りだったな……」  明らかに棒読みなセリフを吐いて、自分の机に戻っていく二人。そんな二人に佑月に笑みがこぼれつつも、内心は酷く抉られるような気持ちになっていた。 (悟られてはダメだぞ……みんなの日常を、壊すわけにはいかないんだから)  自分のデスクに置いている卓上カレンダーを手に持つ。  あと二日で須藤は帰ってくる──。

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