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Confinement 5

「先輩、オレはこの後、花の依頼の手伝いなんですけど帰り大丈夫ですか?」 「あ、そうだったな。大丈夫大丈夫。一応変装してるし」  佑月が眼鏡のブリッジをクイッと上げて見せると、海斗は少しホッとしたように笑った。 「いいですか、くれぐれも気を付けて下さいね」 「うん、もちろん。ありがとね。花ちゃんに宜しく」 「はい。では、行ってきます」  心配そうに何度も振り返りながらも、次の仕事へと海斗は向かって行った。 「さて、俺はこの後どうしようか。事務所に帰って書類整理しないとだしな……」  事務所に須藤が来る確率はかなり大きい。鍵を掛けても、壊されたら最悪だ。  そもそもこんな風に、ずっと身を隠すこと自体が無理のある話だ。須藤が諦めてくれない限り、会ってしまうのは仕方ないと佑月は思った。  だから会っても── 「なんだ、その格好(ナリ)は」 「っ……」  大通りの歩道。  突然過ぎて、心臓が止まったかと思うほどに佑月は驚いた。しかも馬鹿みたいに条件反射とでも言うのか、佑月は後ろを振り向いてしまった。  会いたくて会いたくて仕方なかった男。二週間ぶりに見る男が、高級車に寄りかかって佑月を見ている。  そこは駐禁だぞと、思わず口に出しそうになった佑月は、ハッと我に返り、直ぐに身を翻しダッシュした。 (て言うか、あの人俺だって直ぐに分かったのか? 海斗でさえ直ぐには分からなかったのに)  もしかしたら海斗とさっきまで一緒にいたから、見られていたのかもしれないが。佑月は全速力で走りながら、直ぐに後ろを確認したが、驚愕で佑月の目は飛び出そうになった。 「っ!! 嘘だろ!? 有り得ない!」  慌てて路地へと逃げ込んだ佑月だったが、自分の見たものが信じられず、ややパニックになる。 「おい」 「うわっ!?」  路地に逃げ込んだのがいけなかった。手首を掴まれ、そのままの勢いで建物の壁へと追い詰められてしまった。 「っ……」  まるでウサ◯ン・ボルト並みの俊足。 「この俺を走らせるなんてな」  佑月がゼーゼー言っている傍で、須藤は息一つ乱れていない。 「そ、そんなの知らないし……離してください……」  振りほどこうとした手は逆に、もう片方の手と共に壁に縫い付けられてしまう。 「会わないとはどういう事だ。佑月」  真っ直ぐ佑月を見据える目。その目を見つめ返す事が出来ず、佑月はスッと目を逸らす。 「俺から目を逸らすな」  須藤は少し乱暴に、佑月の掛けている眼鏡を外した。 「……っ」  そう言うならばと、佑月は反抗心とでも言うのか、睨み上げるように須藤に視線を据えた。 「ほぅ……懐かしいな、その目。初めて会った時、俺に挑むような目をしていた。それがお前を気に入ったきっかけだったがな。だが、あの頃のような鋭さに欠けている」 「……どうでもいいだろ、そんなこと。離してくれよ……。もう、あんたには付いて行けなくなったんだよ。だから俺はあんたから離れる。付きまとうのはやめてほしい……」  きっと、佑月の怯えと動揺は須藤に伝わってしまっているだろう。  この男に隠し事など出来ないから。だが、隠さなければならないし、離れなくてはならない。こんな目の前にいるのに、その胸に縋ることも許されない。  こんな酷い言葉を言わなければならない……。

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