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Confinement 6

「忘れているようだから、思い出させてやる」 「なっ……うわっ!? やめろ」  腰を抱えられたと思った瞬間には、佑月は須藤の肩に担ぎ上げられていた。しかも火傷の痕がちょうど当たって痛い。 「須藤さん、イヤだ! 下ろして!」 「お前は俺のものだ。逃がしはしないと言ったはずだ」 ──言われなくても、ちゃんと覚えてるよ。  だがまさか、須藤がここまでするとは佑月も考えてはいなかった。こんなところ、奴らに見られたら一巻の終わりだ。 何の為にあんな屈辱を受けたのだと、頭を抱えたくなる。 「頼むから……下ろして……」  佑月の小さくなる声は、もちろん聞き入れて貰えることはなく、静かに現れたマイバッハの車内に押し込められてしまった。  幸いと言うべきか、人通りのない路地だったため、誰にも見られてはいなかった。こんな、まさに拉致現場を目撃された時には、色々と面倒なことになる。いや、須藤にとっては大したことでもないのかもしれないが。 「何処へ連れてく気ですか。お願いですから帰してください」  そう佑月が懇願するも、須藤は完全に怒りのオーラに包まれており、一言も喋ることはなかった──。 「いっ……!」  ドサッと少し乱暴に放り投げられ、佑月の身体は大きなベッドへと沈む。ここはもう見慣れたと言ってもいい須藤の部屋。身体を起こそうとするよりも速く、須藤は佑月の身体に跨がってきた。 「な、何するんだ! やめろ!」  相変わらず何も喋らない須藤は、いきなり佑月のスーツとワイシャツを引き裂いた。スーツが……と嘆く間もなく、須藤にワイシャツの下に身に付けていたTシャツの裾を、捲り上げられる。  ヤバいと思ったときは遅かった。手で隠そうとした佑月だったが、須藤の動きの方が速く、佑月の両手を束ねて片手で押さえつけてきた。 「やっぱり……」  やっと口を開いた須藤のその声は、まるで唸り声のよう。〝やっぱり〟と言うことは、さっき佑月を肩に担ぎ上げた時に分かったということだ。どんな小さな事でも見落とさない須藤は、敵に回したら本当に怖い人間だと佑月は痛感した。 「どうしたんだ、これは」 「……どうしたって……ただケガをしただけ……」 「ケガ?」  全く信じていないような声音。須藤の指は、おへそから感触を確かめるようにゆっくりとした手付きで、左の乳首へと滑っていく。須藤に触れられるだけで全神経が、その箇所に集中する。 「っ……」 「ここも瘡蓋(かさぶた)が出来ているな」 「触らな……っ」  スルスルと人差し指で頂を優しく撫でられ、身体が過剰なくらいに反応してしまう。佑月の意識がそっちにいってる時を逃さないかのように、須藤は事もあろうに、防水フィルムを貼ったガーゼを一気に剥がしてしまった。 「あっ……やめ……見るな!」  両手はシーツに縫い付けられてるため、隠すことが出来ず、佑月は顔を背けることしか出来ない。 「なんだ……これは」  絞り出すような低い声。 「すど……」  須藤から凄まじい殺気のようなものを感じて、佑月は息が出来なくなる。部屋の温度までもが一気に下がった。

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