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Confinement 7

「……な、何でもないですよ。ただの火傷です……」  あまりの息苦しさに、佑月の出す声も消え入りそうだ。 「誰がやった」 「……」  火傷の痕には、結構な数の水ぶくれが出来ている。痛みはだいぶ引いたが、空気に触れると痛みが起きる。 「誰が……って、こんなの遊びの一環ですよ」 「真面目に答えろ」  殺気立っている須藤を前に、はぐらかすのはかなり勇気がいる。だが、はぐらかすしかない。 「いいじゃないですか、誰だって。どいてください。帰らせてもらいます」  上半身を半分ほど起こしたところで、佑月は肩を強く押され、再びベッドへと沈んだ。 「っ……何するんだよ」 「これ以上俺を怒らせるな。佑月」 (もう十分怒ってるじゃないか……)  しかも、人一人殺してしまいそうな恐ろしい目をした男に、答えられるワケがない。現にそんな目を間近で見ている佑月でさえも、恐怖でどうにかなってしまいそうなのに。 「まぁいい。お前が答えなくても、直ぐに分かる」 「っ……ん……」  どういう事か訊ねる前に、佑月は突然須藤に唇を重ねられる。抵抗しようにも、身体を押さえ付けられているため身動きが取れない。  だが佑月は久しぶりの須藤のキスに、どこか抵抗したくない気持ちがあったのだろう、侵入してくる舌を素直に受け入れていた。  須藤の怒りの気は益々募り、ピリピリと肌を刺すのに、キスは驚くほどに優しく深い。  長いキスの後、ゆっくりと唇を離していく須藤の口から「佑月……」と掠れた声がこぼれる。それはとても苦しげで、佑月の胸までもが締め付けられるような声音。だがそれも一瞬で、直ぐにその双眸は鋭利に細められていった。息を呑む佑月の頬をスッと撫でた須藤は、直ぐにベッドから下りて、何故か佑月の鞄を手に持った。 「須藤……さん?」 「お前には暫くここに居てもらう」 「……は?」  佑月の鞄を持ったまま部屋を出ていく須藤を、佑月は慌てて追いかけた。 「ちょっと待ってください! 暫くここにってどういう事ですか? 何で俺の鞄……返してください」 「お前を外に出すつもりはないと言っている」  そのセリフに愕然と、佑月の全身から血の気が引いていく。 「何の……冗談? 俺はあんたと離れるって言ってるのに……。帰らせてください」  冗談ではなかった。こんなところに閉じ込められれば、岩城らが危ない。須藤とは切れてなくてはならないのに、部屋にいるなど言語道断。こんなことは直ぐにバレてしまう。  背筋に冷たいものが走り、佑月は直ぐに自分の鞄を取り返そうと手を伸ばしたが、すげなく阻まれる。 「食事は運ばす、着替えも用意する。部屋にあるものは全て好きに使っていい。ただし、外へ出ることは許さない」 「……なんだよ……それ。ふざけるなよ。仕事もあるんだぞ? それをこんな……」 ──まるで監禁じゃないか。

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