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Confinement 9
「成海さんがご心配なさってることは、須藤様が全て排除するよう手配されております」
「排除? どういう事……ですか?」
「何でも屋の仕事は成海さんの代わりを立ててますし、成海さんのご関係のある方々、何でも屋の従業員、【ciel】のホストクラブ、小料理屋の【小雪】など、あらゆる方面に何らかの危害がないよう、手配されております」
「え……どうして……?」
まさかの言葉に、信じられない思いで佑月は滝川の顔を見た。
「成海さんが脅されているのをご存知だからです」
「あ……」
やはり知っていた。それはそうだ。突然会わないだとか、煙草の痕だとか、そんなものを見れば何があったのかなど、須藤にとっては一目瞭然。なぜ何もバレてないと思えたのか。
こんなところに閉じ込めたのも、ただ須藤を怒らせたからだと佑月は思っていた。だがそうではなくて、須藤は佑月を守ってくれていた。しかも迅速に佑月の周囲のことまで。本当に自分の馬鹿さ加減には、呆れ返る思いだった。
「本当はこの事も口止めされてるんですが、成海さんが少しでもお元気になられるなら……」
「そう……だったんですね……。教えて下さり、ありがとうございます。あの……それじゃ、誰も危険な目には遭ってないんですね?」
佑月は縋るように滝川の腕を掴んだ。
「ご安心ください。誰一人として危険な目など遭っておりません」
「あぁ……良かった……本当に。ありがとうございます」
何よりも安心を与えてくれるその言葉に、佑月はフローリングへと崩れ落ちるように滝川に頭を下げた。 今日こそは、ちゃんと起きて須藤を待っていようと佑月は思った。
翌朝、佑月は半分死んだかのように、ボーッと一点だけを見つめていた。須藤は帰って来なかった。最近ろくな睡眠、食事も採っていないせいで、考えてしまうものもろくな事ではなくて。何かあったのだろうかと一晩中気を揉んでいた。
しかし気を揉んでいても何も出来ない現実に、佑月は気合いを入れるべく、勢いよくベッドから起き上がった。
「よし! まずは風呂入るか」
四日目ともなると頭も痒くなるし、気持ち悪い。こんなに風呂へ入らなかったのは初めてだ。
「ふぅ……さっぱりした……」
爽快な気持ちで風呂から上がった佑月は、須藤が用意してくれていた服を身に付け、さっと風呂を掃除した。そして、そのままベッドルームへ行くとベッドシーツを勢いよく剥がして、それも洗濯をした。
バルコニーはあるが、物干し竿などここにはないだろうし、こういう時ドラム式洗濯乾燥機は助かる。まる三日間、もぬけの殻だった佑月は昨日の朗報に息を吹き返したかのように、張り切って掃除をした。
「やっと食べて下さりホッとしました」
様子を見に来てくれた滝川。まる三日も食べていないため、さすがにいきなり固形物は胃腸の負担になるから、佑月はお粥を作って食べていた。
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