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Decision 3

「佑月先輩手伝いますよ」 「え……あ、ありがとう」  考え事をしていた佑月は、陸斗の気配が全く分からなかったせいで、肩が僅かに跳ねた。 「今回のこと……実は須藤さんにめちゃくちゃ嫉妬したんですよね……」 「え?」 「だって、全部良いところ持ってかれましたし。でも、それ以上に感謝もしてるんです。きっとオレらでは先輩を守れなかったですし。あそこまで迅速な処置、オレらでは到底ムリだった」 「陸斗……」  苦笑を浮かべる陸斗。それが少し大人びた表情に見えた。 「今まで須藤さんのこと、認めたくないって気持ちが一杯だったんですけど、今回のことで、どれだけ先輩の事を大事にしてるのかってことが分かったので……って、先輩?」 「え!? あ……いや、その……こういう時どういう顔すれば……あはは……」 「顔、真っ赤ですよ? 可愛いですね」 「可愛いって……陸斗……」  思った以上に恥ずかしい。何となく自分たちの関係は、知ってはいるだろうなと佑月も思ってはいたが、面と向かって言われると、居たたまれないことこの上ない。  出会った時から、佑月に好意を持つ男らを嫌悪し、警戒していた双子。その佑月が、まさか男を好きになるなんて思ってもみなかったに違いない。そんな双子に、受け入れてもらえたことが、佑月は心底に嬉しかった。 「それで、うちの爺ちゃんと親父が、ますます須藤さんが欲しいとか言っちゃってるんですよね。あんな男、正直誰も扱えないですよ」 「……だね。唯我独尊の固まりのような人だし……」 「ですよね!」  今の陸斗やみんなの様子からして、佑月が傷を負ってることは知らないようだ。 (良かった……)  これが佑月にとって一番の気掛かりだった。佑月が傷を負ってるなんて事を知ったら、双子は激昂するに違いないから。  ホッとした佑月が、陸斗と笑い合いながらお茶を持ち、給湯室から出る。その時、事務所のドアをノックする音がした。 「陸斗ごめん、これ頼む」 「了解」  お茶の乗ったトレイを陸斗に預けて、佑月が事務所のドアを開けに向かうと、直ぐに滝川が後ろにやってきた。 「お待たせしま……」  笑顔でドアを開けた佑月の顔は、一瞬で凍り付いた。 「貴様何しに来た」  滝川が怖いほどの唸り声を上げながら、佑月の前に立ちはだかる。異変に気付いたメンバーも、慌てて駆け寄って来た。 「あんたに話があって来た」  男は佑月だけに視線を注ぐ。 「今頃何の話──」 「滝川さんいいんです。俺もちょうど話があるので」 「話って成海さん……。こんな男と今さら何の話を?」  滝川が困惑するのは仕方がない。だが当事者の自分だけが、蚊帳の外というのはやはり納得出来なかったのだ。 「俺の知りたかった事を話してもらいます。どうぞ中へ。町村さん」  黒衿会の構成員。佑月に依頼を持ってきた男、町村を佑月は中へと促した。

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