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Decision 14

■ 「やっぱり落ち着くな……このボロアパート」  だけど一週間以上も部屋を空けてると、なんだかカビ臭い気がした。今日は、依頼が一件も入っていないため、最近休みがなかなか取れてない皆のために、事務所を休みにした。因みに【J.O.A.T】は一応、土曜日が定休日だったりする。依頼は不定期に入るから、メンバーにはちゃんとした休みがあげられていないのだ。労基法、云々突っ込まれると、佑月にとっては立つ瀬がない。  その休みを利用して、佑月は掃除を始めた。始めたのはいいが、昨日というか今朝まで須藤にむちゃくちゃにされたせいで、実はさっきまでへばっていたのだ。やっと動く気になったのだが、やっぱり辛いものがある。須藤は相変わらずピンピンしている。 「体力差というものをちゃんと分かって欲しいよな。しかもあの人、一睡もしてないのに、元気だよな……って、いけね。もうすぐ来る時間だ」  今日、佑月は颯を家に呼んでる。慌てて掃除を済ませ、ホッと息をついたタイミングの良さでインターホンが鳴った。一応ドアスコープから確認することを忘れない。これは須藤から煩く言われたからだ。確認をしてドアを開けると、いきなりの抱擁が佑月を待っていた。 「ユヅ! 会いたかった!」 「う……颯……いつも苦し……」 「あ、悪ぃ」  そうとは思ってない事は、颯の顔を見れば良く分かる。締まりがなく緩んだ表情だから。 「ユヅの体がもう少し太れたらなぁ。この腰だって女みてぇだぞ」  颯は両手で佑月の腰をグッと掴む。食べても太らない体質らしい自分。筋肉も付きにくい。男としてはショックなものがある。 「女みたいで悪かったな。それはそうと、わざわざ来てくれてありがとな」 「全然。ユヅん家は寛げるから好きなんだよな」  大学の時から何度か泊まりにも来ていたのもあり、馴染みある部屋で颯は早速寛いでいた。  佑月が颯を家に呼んだ訳。何となく颯本人も分かってるかもしれない。少し緊張が混ざる中、佑月は颯にお茶を出して、ガラステーブルを二人で囲った。 「健二くんは元気してる?」  先ずは当たり障りない会話から。 「あぁ、普通に元気。てか、この間会ったばかりじゃん」 「そうなんだけど。彼はなんか気にかけちゃうんだよね。ほら、この間のホテルがどうとか言ってた女の子も、来なくなったって言ってたし」 「あぁ、あれね。エリカちゃんは確かに残念だったけど、なんか黒い噂もあったりしたから、ちょうど良かったんじゃねぇのかな……」 「黒い噂?」 「うん、なんか美人局(つつもたせ)まがいな事してるって。あくまでも噂だけどな」  あながち間違ってはいない。颯らの業界の情報網も広いってことが良く分かる。 「それより、話はそんなことじゃねぇんだろ?」 「うん……」  アイスコーヒーで喉を潤してから、佑月は背筋を伸ばした。 「もう気付いてると思うし、今さらだとは思うけど、ちゃんと颯には言っておきたい」 「やっと、話す気になってくれたんだな」  颯はホッとしたように、嬉しそうな顔を見せた。

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