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Decision 16
「て言うか、何で……俺、鍵閉めたはずだけど……」
佑月が掛けた自分に自信を無くしていると、部屋の侵入者、須藤は「これか?」と鍵を見せてきた。それを見た佑月は慌てて飛び起きて、自分の鍵を確認した。
(……ある。なら、あれは?)
「……まさか、鍵作ったんですか?」
「そんなことより、どういうことか説明しろ」
忌々しそうに颯を一瞥する須藤。鍵のことは、あっさり無視。
「説明しろって……颯だし。知ってるでしょ?」
「あぁ。cielのNo.1だろ。それでそいつと今何してた」
「何してたって話をしてただけだよ」
「話? お前は話をするのに、いちいち絡み合うのか」
「絡みっ……」
いや……今のは少し、そんな風に見えなくもないと佑月も思った。思ったが、俺はあんた以外の男と絡み合う趣味はないぞと、佑月は内心で吠えた。
「あの……オレ、帰ろうか?」
居たたまれないといった様子で、ボソリと颯は言う。
「何で颯が帰るんだよ。帰るのは須藤さんだよ」
「なんだと? 今朝まで無理をさせたから心配──」
「うわぁ! な、何言ってんのかな、この人は!」
佑月は慌てて須藤の口を手でふさく。身体の心配みたいな事を須藤は言っているが、本当のところはどうだかと、佑月は密かに須藤へと疑惑の目を向けた。そんな中で、颯は頬を僅かに赤く染め、佑月らから視線を外していた。
「ほら須藤さん、早く仕事戻らなきゃいけないんでしょ? さ、早く」
須藤の背中を押して、佑月は玄関まで連れていく。ついさっき颯にカミングアウトしたばかりの佑月にとって、これは恥ずかしくて居たたまれない気持ちだった。
「佑月、今夜覚えておけよ」
めちゃくちゃご機嫌斜めな様子に、佑月は逃げ出したくなる。でも佑月の中では怒りもあった。
「そうやって、自分のことを棚に上げるのやめて下さい。勝手に鍵作るとか、そっちの方が最低だし」
佑月が睨み上げると、須藤は少しは反省したのか、張り詰めた空気を緩めてきた。と、思いきや。
「なら、ここを今日にでも引き払ってもいいんだぞ」
「は? 何で引き払うことになるんだよ。ここは俺が住んでるアパートだし」
「こんなボロアパート、住む価値がない。俺のマンションへ来い」
「な……価値がないって、どんだけ失礼なんだよ……。そりゃあんたにとってはそうかもしれないけど、俺にとっては──」
「あ~ほら、ユヅ喧嘩はやめろって。な?」
須藤の両腕を掴む佑月を、颯は後ろから佑月の手首を掴んで離させた。
「おい、触るな」
「す、すみません……」
颯に凄む須藤に……
「もう、いいから早く仕事に戻って下さいって!!」
佑月がキレたのは言うまでもない──。
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