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《Background》 2

「あはは! らしくない答えですね。それなのに、そんなカタギの人間に突然手を出すなんて、どうしたんですか?」  白々しい運び屋のセリフに、村山は反吐が出そうだった。しかしここで反論すれば、自分がその運び屋の情報で、突発的に動いたことを認めたことになる。そう、成海に指摘されたように、村山の中では大きな葛藤があった。  運び屋から話を聞いて、須藤が遊びではなく、本気で成海の傍にいることを知り、激情に駆られた。本当なら成海を再起不能まで追い詰めてやりたかった。いや、直前まではそのつもりだった。だが気丈に堪える成海を見ている内に、嫉妬に駆られた自分の滑稽さが浮き彫りとなった。そして、これでは運び屋の思惑通りになるのではと、冷静になる自分もいたりしたのだ。  結果、何もかもが中途半端に終わってしまった……。 「貴様にいちいち答える義理はない。さっさと消えろ」 「そうですね。これ以上、僕がここにいてはお身体に障りそうですもんね」  さも心配そうに眉を寄せているが、運び屋のその目には何の感情もない。 「では、今までお疲れ様でした。ゆっくりと休んでください」  そして、妖艶な笑みを残して運び屋は去って行った。  一体何しに来たのか。最後の最後まで嫌味を言うことを忘れない運び屋。出て行ったドアに物を投げつけたくなるのを、村山は必死に堪えた。  リアンは病院の裏口から表に出ると、忌々しげに舌打ちを鳴らした。 「ったく、使えない男だったな。もう少し頭が良いって思ってたのに」  リアンは苛立たしげにスマホを操作し、何処かに掛ける。 「あ、もしもし、僕だけど。うん、もう必要ないから後は任せるよ。もちろん覚えてるよ。ちゃんとしてくれたら、何でも好きにさせてあげる。うん、じゃ、後は宜しくね」  電話を切るとリアンは病棟へと振り返った。 「さようなら。村山さん」  それだけを呟くと、リアンは感情を無くしたかのように表情を消すと、一切振り返らず、立ち去って行った──。

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