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《Background》 3

■ 「あぁ……もう……ダメだ……ん」  その艶かしい声は、更に情欲をそそられる。  白い肌をピンク色に染め、蕩けきったその表情を見ているだけで、自分の欲望に際限がないのだと思い知る。須藤は、自分が与える快感に溺れる愛しい男の咥内を貪りながら、弱い箇所を突き上げる。 「んん……んぁ!」  須藤の咥内で喘ぐその唇を解放してやれば、一際大きな声がこぼれた。  村山に会ったことで説教と称して、思うままに佑月を抱いてから一週間。今日も佑月の全てを貪るように抱いていた。 「あぁあ……須藤さ……イク……っ」 「……あぁ、イケ」  お互いが同時に絶頂に達し、須藤は快感に身を震わせた。汗でぐっしょりと濡れた佑月の髪を撫で、キスをしようとしたが、ぐったりと意識を手離してしまっていた。 「……落ちたか」  まだ佑月の中に居たかったが、意識がないのでは仕方がないと、須藤が雄を引き抜いた時、何処からかバイブ音が聞こえてきた。佑月との情事の際は邪魔をされたくないから、スマホの電源はいつも落としているが、どうやら今日は忘れていたらしい。 「何だ? 今忙しい」  須藤は不機嫌な声を隠さず電話に出る。 『どうも、すみませんね。もしかしてお楽しみ中でしたか?』 「さっさと用件を言え」 『クク……相変わらずの前以外では冷血人間か』 「……」 『はいはい、申し訳ございません。ったく、少しはジョークも通じるようになったのかと思ったのにねぇ……』  ぶつぶつと文句を言うのは、須藤との長年の付き合いがある情報屋。【espoir】のマスターである中村が警察内部の動きを知らせてくれる一方、この情報屋は裏から表まで幅広い情報を、須藤に寄越してくれる。歳は五十代前半で、見た目は小汚いオッサンだが、寄越される情報はどれも信頼するに足るものだった。 『今から三時間前だが、村山が病院内で殺されてるのが見つかった』 「殺された?」  佑月の髪を撫でていた須藤の手が、ピタリと止まった。

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