227 / 444
《Background》 4
『あぁ、どたまに一発な』
「誰が殺った」
『黒衿会の人間だ。派閥があったのは知ってるだろ? 古参の小寺派と村山派とで』
「あぁ」
『その小寺派の若いのが殺ったそうだ。だがな、少し違和感がねぇか?』
「そうだな。その辺りはしっかり調べてもらうぞ」
『へいへい』
村山は破門されたのだから、小寺派にとっては邪魔者がいなくなったのだ。それなのに、わざわざ波風立てるように、村山を消すのはかなり違和感があった。今頃、黒衿会内部は荒れているだろう。 通話を切ってから、須藤は煙草を口に咥えた。
村山を殺して誰が利益を得たのか。若い者が殺したというものも、誰かの命令で動いたのは明白。だが、小寺の命令でないことは確かだ。そこまで小寺も馬鹿ではない。自分に疑いの目が真っ先に行くことくらい、分かってるだろうから。なら、中では小寺を貶めようと、新たに派閥が出来ているのか。正直、須藤の知ったことではなかったのだが、何か妙に引っ掛かりを覚え、情報屋に探らせることにした。
「ん……また……か……」
不意に隣で気を失っていた佑月の目が覚め、自己嫌悪の第一声。声を出させ過ぎたために掠れる佑月の声にも、須藤は欲情する。須藤は火の付いてない煙草を捨て、佑月の頭を撫で下ろした。
「もう一回くらい、いけそうか?」
「えー……またですか? もう、三回もしたじゃないですか……ダメ」
腰を擦りながら背中を向ける佑月に、須藤は首筋や肩にキスをしていく。その気にさせようと、手での愛撫も忘れない。
「……」
すると、佑月は諦めのため息を吐く。
「もう……次は二回までしか付き合わないからな」
「あぁ」
須藤の返事に警戒を解いた佑月は、須藤へと身体を向けてきた。
本当に嫌なら、佑月は絶対に応えようとはしない。だけど佑月は交換条件を出すことを忘れない。もちろん須藤はそれを飲んでやる。無茶ばかりさせているのは事実だし、下手をしたら、触ることも許してもらえなくなるかもしれないからだ。
「その前に、キスしてください……」
珍しく自分からねだる佑月に、須藤はその綺麗で甘美な唇を堪能した。
村山の件はとりあえず置いておき、今の須藤の頭の中は、目の前の可愛くて、愛しい男のことしかなかった──。
書籍の購入
ともだちにシェアしよう!