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内輪で

◇  暦の上ではまだ秋らしいが、冷え込む日が多くなってきた今日この頃。あの村山が死んだ事を、佑月はニュースで知った。派閥争いで殺されたとテレビでは報じていたが、本当のところはどうなのか。  双子や、須藤からはもちろん情報を得ることは出来なかった。踏み込むなと言われた手前、佑月には追及する手立てがなく今日に至る。だが、何か嫌なものが付きまとってる気がして、佑月は未だ後味悪さを感じていた──。  依頼が早めに終わった佑月は、スーパーに寄って、必要な物を買い込み、足早に事務所へと戻った。 「よいしょ。はぁ……結構重かったなぁ。手真っ赤だ」  大きな袋を二つ、給湯室のテーブルに置く。  寒さでかじかんでいるのもあって、佑月は動きの鈍い手に息を吹きかけた。そして袋から詰め込んだ缶ビールや、缶チューハイ、ノンアルコール飲料などを出して、小さな冷蔵庫に入れていく。  暖房を入れてテーブルや机をセッティングし終えると、佑月は一息つくようにソファに腰を下ろした。  時刻は二十時前。【J.O.A.T】の営業時間は一応二十時までと定めている。だが、依頼内容によっては時間はずれたりと様々だし、時々張り込みなどで帰れない時もある。夏場はかなりキツイ。風呂にも入れないから。  去年のことを佑月が思い出してると、事務所のドアがノックされた。佑月がドアを開けると「よぉ!」と元気よく、颯と岩城が遠慮なく入って来る。 「兄貴、オレまで呼んでくれて嬉しいです! ありがとうございます!」 「こっちこそ、貴重な休みの日にわざわざ来てくれてありがとう」 「そんな! 兄貴に誘われたら、いつでも駆け付けます!」 「ありがとう」  相変わらず岩城は、清々しいほどに気持ちの良い青年だ。 「ユヅ、肉はまだ冷蔵庫入れておくのか?」 「うん、まだみんな帰って来てないし、入れといて」 「オッケー」  実は今日は、皆で焼肉パーティーをするのだ。何でも、颯が上客から肉をプレゼントされたらしいのだ。しかも松阪牛A5ランクの最高級のお肉。量も半端ないらしく、もはや何グラムあるのか分からないらしい。  それで颯は、自分一人じゃ到底食べきれないってことで、最初は佑月だけを誘ってくれていた。だがどうせなら、肉を追加で買って皆で焼肉しようと佑月が提案をすれば、颯は二つ返事で快諾をしてくれたのだ。 「それじゃ、みんなお疲れ様ぁ!」 「お疲れ様ー!!」  軽快に缶がぶつかり合う音。喉を鳴らして旨そうに飲むみんな。極上の肉を焼いて、双子と岩城が争うように食べているのを見ているだけで、微笑ましくなる。佑月が少し気になるのは、花が妙にそわそわしてること。どうしたのかと、佑月が声を掛けようとした時、花は鞄から雑誌を取り出した。 「そうだ、この雑誌のね、占いがめちゃくちゃ当たるって評判で、買ってきちゃった」 「フン、女って本当、そういうの好きだよな」  海斗は鼻で笑いながら、缶ビール片手に雑誌を覗きこむ。 「別にいいじゃん。あ、因みにお二人さん、今月トラブルに注意だって」 「はは、兄貴トラブルに注意だってよ」  海斗は完全に信じてないから、面白半分。陸斗も信じてはいないようだが、嫌な内容に肉を咀嚼しながら眉を寄せていた。

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