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内輪で 3

「なんて書いてある?」  だからついつい佑月は颯に訊ねていた。だが颯は少しの渋面を作る。 「んー……なんと言うのか……を失うって……」 「大切な……?」 (って、おいおい……。なんか、めちゃくちゃイヤな内容なんですが……)  皆もちょっと深刻そうに黙り込んでしまう。 「あ、でも……って、めちゃくちゃアバウトだな。今月は大切な物は触らないようにしろよ? 因みにラッキーカラーはネイビーだってよ」 「ネイビーか……」  物とは限らない。でも、アバウト過ぎて気を付けようもないなと、佑月が思考を巡らせていると、海斗が颯から雑誌を取り上げてしまう。 「はいはい、これはもう終了です。こんなの当たんねぇから佑月先輩も気にしちゃダメっすよ。ほら、花、しまっとけ」 「う、うん」 「あー!」  花が雑誌を鞄の中に入れている時、岩城が突然大きな声で叫ぶ。 「何だよケン。うるせぇな」 「に、肉が焦げてる! もったいない!」  岩城は半分涙目で、網の上の黒焦げ和牛を箸で掴んで震えている。 「……」  さっきの微妙な空気が一瞬で吹き飛ぶように、みんなは一斉に噴き出した。 「アハハ! ケンお前やぱサイコーだな!」 「へ? はにがでふか?」 「物、口に入れて喋んなって」  岩城のお陰で、すっかり場の空気は楽しいものに変わった。  肉もほぼ尽きようとした頃。事務所のドアが開く気配がして、佑月と双子は直ぐに顔を見合せた。 (誰だ? こんな時間)  二十一時半は過ぎてる。佑月はドアに背を向けて座っている。衝立もあるせいで来客は見えない。だけど、斜め前に座る花からは、体を少しずらせば見える位置だ。その花の表情は、まさしく花が咲いたかのような、嬉しそうな笑みが広がっていた。佑月は頭に疑問符を浮かべながら腰を上げた時、来客が姿を現した。 「え……」 「……」  皆が皆……いや、花以外が驚愕の表情になる。 「あれ? えっと……今日約束してました?」  佑月は内心焦りながら記憶を手繰り寄せた。だが約束した記憶はない。それに今週は忙しいと言っていた。 「約束はしてないが、お前が呼んでると聞いたから来たんだが?」  完全にこの場に不釣り合いな須藤が、僅かに眉を寄せて佑月だけを見る。 「俺が……呼んだ?」  須藤が嘘を言ってるようには見えない。 (えっと……記憶にないんですが!? 俺……ついにボケたのか?)

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