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夜の公園
◇
bar【espoir】。
今夜は珍しく貸し切りではないらしく、疎らに客がいる。 年齢層は三十代から五十代。殆どが男性だ。
その中、須藤の存在感があまりにも大きいため、時折佑月は視線を感じていた。佑月と須藤はいつもの定位置であるカウンター席のため、背中にそれらが集中しているのだ。何処に居ても須藤は目立つ男だ。
「佑月、そろそろ良い返事を聞かせてくれてもいいんじゃないか?」
「良い返事?」
佑月はマティーニを口に含み、喉を潤す。 久しぶりに飲むとアルコールの強さをよく感じる。何だか今日は、早くに酔いそうだと佑月は思いながら、須藤に顔を向けるが。
「……」
妙に艶っぽい須藤の視線にどぎまぎとして、佑月は視線を外してしまう。こういう場所だと、余計に須藤が大人の男なんだと痛感する。
「俺の所へ来いと言っただろ」
「え? あれ本気だったの?」
すっとんきょうな声を出して言う佑月を、須藤は軽く睨んでくる。
(あ……拗ねてる)
拗ねてると言っても、佑月の勝手な解釈だが。何だかそう見えてしまって、可愛いと思ってしまう佑月がいた。
「いや……でも、一緒に住むのは……。交通の便も不便だし」
「車を出すんだ。何も不便じゃないだろ」
「そう言いますけどね、今だって送迎はやめて欲しいって思ってるんだけど。時間だって不規則だし、それに合わせなきゃならない滝川さんだって大変なんだし。こっちもそれが気になって時間にゆとりが持てないって言うか……」
佑月にはそれが少しストレスにもなってる。
「それなら気にするなと言ってるだろ」
「気にするし。それに一緒に住むのは……色々ね……」
「色々ってなんだ」
(そこを突っ込んでくるなよ……)
「色々は色々だよ」
「ちゃんと答えろ」
「……もういいでしょ。この話は終わり」
「勝手に終わらせるな」
須藤が佑月の腕を掴んだ時、マスターの中村が声を上げて笑った。
「アハハ、仁、そりゃあお前、一緒に住んだら毎日盛 ってそうだからだろ」
(な、中村さん!?)
中村なら二人の関係を知っているだろうとは思っていたが、改めて口に出されると居たたまれなくて、佑月は顔から火を噴きそうだった。
「当然だろ」
(って、あんたも何シレっと答えてんだよ)
だからイヤなのだ。決してセックスをするのがイヤなワケではない。でも須藤本人も堂々と認めてるように、毎日盛られたんじゃ、佑月の身がもたない。この化け物並みの体力のある男と、一緒にしないで欲しいのだ。
「と、とにかく今は一緒にとか、ムリだし」
「なら、いつならいいんだ」
「いつならとかじゃなくて……」
と、barを出るまでずっと二人はこんなやり取りをしていた。
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