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夜の公園 3

 夜の景色に煌めくレインボーブリッジ。久しぶりに眺めるそれは、普段より綺麗に見えるのは、二人で見ているからだろうか。 (……って、なんだこの乙女思考)  須藤と一緒にいるようになってから、佑月の乙女思考には拍車掛かっていた。 「たまには、こういう時間も悪くないな」 「で、でしょ? このマッタリとした時間が好きなんだよね……って、そんなにじっと見ないで下さいよ……」  まばたきもしないでの勢いで、じっと見てくる須藤。佑月の顔が、徐々に熱くなる。いつまで経ってもこんな様で、佑月は自分が情けなくなる。 「だから見るなって」 「そんな可愛い顔するからだろ」 「可愛いとか言うな」  須藤の肩を佑月がグイグイと押していると、二人の前をイチャイチャしたカップルが通り過ぎて行く。彼女の方がチラチラと振り返ってまで見てくる。決してこっちはイチャイチャしてるワケではないが、何となく佑月には恥ずかしいものがあった。やはり外だと色々な刺激がある。 「はぁ……」  星がまばらに浮かぶ夜空に、佑月は息を吐き出した。 「で、話がしたいって、何か訊きたい事でもあるのか?」 「訊きたいこと……そうだな……そうかも。俺、須藤さんのこと何も知らないし」  別にこれと言って訊きたい事があったから連れ出したワケじゃない。佑月はただ、一緒にいる時間が欲しかっただけだ。だが確かに佑月は、須藤のことはほとんど知らないと言っても過言ではなかった。深く知る事は出来ないにしても、誕生日さえ知らないのは、あまりにも寂しすぎた。 「何が知りたいんだ?」 「うん。その、誕生日とか家族のこととか……」  須藤は煙草に火を付けて紫煙を吐き出す。 「誕生日は二月七日。家族はいないって言った方がいいな」 「いないって言った方がって……どういう事?」  深く訊くのはどうかと佑月は思ったが、こういう時でないと訊けない気がして、佑月の口は開いていた。 「多分どこかで生きてるんじゃないのかって事だ。俺が小学校へ上がる前にはお互い相手と消えたからな」 「……消えた……?」 「あぁ。父親だった男は俺を自分の親に預けてな。祖母は良くしてくれていたのは覚えているが、その三年後にはガンで死んで、後は施設行きだった」 「……そうだったんですか……」  須藤も結構、過酷な幼少期を送ってきたようだ。人の過去はあまり触れる機会などないし、聞いたからと言って、今更どうこう出来る事じゃない。だけど、一つ言えることは、いま佑月の隣に須藤がいるのは、須藤を産んでくれた母親(ひと)がいてくれたということだ。それだけは感謝したいと佑月は思った。  無意識に触れていた須藤の腕。その佑月の手を取って、須藤は指を絡めてきた。

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