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夜の公園 4
「話、してくれてありがとう」
「いや、構わない。他に訊きたい事は?」
「他に? んー……じゃあ、趣味は?」
「お前を愛でること」
「……は? いやいや……趣味を訊いてるのに」
即答で、しかも無表情で言う須藤に、自分が過剰に反応しているのが、余計に恥ずかしくなった。
「だから趣味だろ」
と、真剣な顔で言う。
「そうですか……。じゃあ、好きな食べ物は?」
「お前」
「……」
これはもしかしなくても、またからかわれているようだ。
「もう……マジメに答えて下さいよ」
「俺はいたって真面目に答えてるんだが?」
そう言って須藤は佑月の腰に腕を回すと、自身へと引き寄せる。
「ちょ、ちょっと、何してるんですか」
周りを見渡そうとする佑月の後頭部を、不意に掴まれる。
「なっ……ん……」
驚く間もなく唇を塞がれて、佑月の頭の中は真っ白になった。必死になって剥がそうとするが、余計に締め付けが強くなる。一体須藤は何を考えているのか。こんな人目のつく場所で。
やっと唇が離れて、佑月は慌てて須藤の身体を思いっきり押し退けた。
「こんな所でするとか……何考えて……」
色々恥ずかしすぎて、佑月は顔を上げられない。
「大丈夫だ。周り見てみろ」
「大丈夫なわけないでしょ」
言いながら佑月は、恐る恐ると周囲を見渡してみた。確かに須藤の言う通り人影もない。さっきまで結構パラパラと人が居ただけに、佑月はホッとした。
「ん……」
安心したのも束の間、またしても佑月は唇を重ねられてしまう。身体にも須藤の手が這う。触れ方に性的なものが混じっているのを感じた。
「須藤さん……いい加減に……こんな所でダメだって」
重い身体を押し退けて、佑月はベンチから立ち上がるが、直ぐに手首を掴まれた。
「じゃあ、そろそろ帰るか?」
真っ直ぐに佑月を見上げる漆黒の目。手首を掴んでいる須藤の指が、スルスルと淫靡に蠢く。
「っ……どうしてあんたはいつも……」
「目の前にお前が居たら、触れたいと思うのは当然だろ」
「だからって……」
佑月だけを映す熱く滾るような目。この目を見ていると、佑月はその呪縛に捕らわれたように反抗出来なくなる。
結局佑月は今夜も我を忘れて、逞しい腕の中で須藤に深く落ちていった──。
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