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トラブル

◇  師走に入って、外はすっかり冬の空気。暖房の効いた事務所内は、まるで天国のようだと感じてしまう。  陸斗と花がそれぞれ依頼で出掛けているため、事務所には佑月と海斗の二人がいる。 海斗は溜まった書類の整理中。佑月はと言うと……いわゆる暇人ってやつだ。 「はぁ……平和だなぁ……」  なんて呟きが出てしまうほど。 「アハハ、どうしたんすか、急に」 「いや、なんかこういうマッタリした時間って幸せだなぁって思って」 「そうですよね……。ここ最近、本当色々ありましたからね……」 「うん、だね……」  本当に結構キツかったこともあり、佑月は心身ともに傷付いた。その度に須藤は救ってくれた。 (俺もいつか、少しでも頼られる男になりたいもんだな) 「このままボーっとしてたら、体なまりそう。ちょっと茶菓子でも買いに行ってくる」 「はぁい。気をつけて行ってらっしゃい」 「うん、行ってきます」  佑月はコートを羽織ってビルから一歩外に出るが、やっぱり寒い。疎らに行き交う人たちも、身を縮こませて歩いている。 「さむ……」  事務所に立ち寄りそうな人はいないか、佑月は周囲をチェックしてから、目的の店へと向かった。 事務所から徒歩十分の場所にある、和菓子屋。そこで苺大福と抹茶大福、生クリーム入りどら焼など買って、ホクホク気分で、佑月は寄り道せずに事務所へと帰る。  甘い物は佑月含めみんな好きなのだ。だから、買ったらその日には無くなってしまう。その食べてるみんなの表情がまたいいのだ。こう、幸せそうっていうのか。 (……なんか俺……爺むさいな) 「あ、お帰りなさい!」 「ただいま。和菓子にしたから、今日中に食べてね」 「はい、ありがとうございます! それと、ついさっき依頼入りました」 「そっかぁ。ごめん、タイミング悪かったな……」  冷蔵庫に生菓子を入れてから、給湯室から佑月が顔を覗かせると、海斗はB5サイズの茶封筒を佑月に見せてきた。  お茶を入れようかと思った佑月だったが、先ずは内容が知りたいと思い、直ぐに海斗のデスクへと向かった。 「いえいえ急な依頼じゃないですし。ほんのついさっきなんですけど、会いませんでしたか? 結構ヨボヨボな爺さんだったんですけど」 「お爺さん? いや、会わなかったな」 「そうなんですか? 本当についさっきなんですけど、意外と足速いなぁ……」  笑い半分に海斗は言う。もしかしたら直ぐに、路地裏へと入ったのかもしれないと、佑月はこの時気にも留めなかった。

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