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トラブル 6
ここ最近、依頼を利用して嵌められる事が続いたため、どうしても佑月には猜疑心が芽生えてしまう。お客様を疑うなんて、とんでもないことだが。だが佑月には、一番の気掛かりとでも言うのか、あることが気になって仕方がないことがあった。
「受取人側は一体どういう繋がりがあるんだろう……」
「受取人側……ですか?」
「うん。最初に対応したのは別の人間だっただろ?」
そう佑月が訊くと、海斗は驚いたように目を見開いた。
「そう……です。え? 何で?」
「ほら、本の確認をお互いにしたって言ってた時に〝確認したようです〟って彼女言っただろ? 自分で確認してたらそんな言い方はしないし」
海斗は手をポンと叩くと「なるほど」と呟く。
「そうです。オレが来た時は先輩より少し上くらいのスーツを来た男が対応してました。それで中身が違うって分かって先輩に電話した後、男が少し席を外しますって言ってそのまま消えたんですよ」
「スーツか……。会社内の繋がりか? でも指定されたあの雑居ビルには、それらしき会社は入ってなかったしな」
スーツや事務服を着るような会社は確かになかった。ビルのテナント案内板を佑月は確認したが、入っていたのは、美容院とカフェとbarだった。そして佑月らが居た、何かしらの事務所風の部屋。
あの部屋は空き部屋となっていた。本の持ち主にはまだ報せず、中継に二人を挟む。相手側にも、色々ワケもあるのだろうが。
(一体何なんだ……。俺の気にしすぎなのか? でも……)
「それでさ、海斗」
「はい?」
「あの事務員の女性……どっかで会った事あったかな?」
あの女性のことで、ずっと佑月の中でしこりが残っていた。 海斗は記憶を手繰り寄せるように唸る。
「すみません……。実は女の顔はあまり見る余裕がなかったと言うか、多分見たんだとは思いますけど、ぼんやりとしか覚えてません……。男の方なら分かるんですけど」
申し訳なさそうに眉尻を下げる海斗に、佑月は首を振った。
「ううん、あの時のことは仕方ないよ」
「いえ、もっとしっかりすべきだったと反省してます」
「いや、ただ気になっただけだから、深い意味はないし気にしないで」
「なら、いいんですけど」
とりあえずこれは、佑月の中だけで留めておくことにした。
「さて、そろそろ行こうか」
「はい」
佑月たちはファミレスを出ると、先ず島田の家へ行くことにした。電話番号で住所を確認し、二人で向かったのだが。
「ここですか?」
海斗が見上げる建物。それは何処にでも見る雑居ビル。だが、とても一般家庭が入ってるとは思えない場所。周囲に目を走らせてみるが、老人が住むにしては猥雑とし過ぎていた。
「そう言えば島田さんが依頼に来て下さった時、俺が買い物から帰って来る直ぐ前くらいに帰ったって言ってただろ? あれってどれくらいの時間だった?」
「本当に直ぐでしたよ。爺さんが事務所から出て一、二分くらいですかね。だから階段とかで会ってると思ってたんですけど。ヨボヨボでしたし……」
ヨボヨボ。あの時も海斗はそう言っていた。
【J.O.A.T】の事務所は二階にある。老人の足でも二分は掛からないにしても、歩道でなら見掛けるくらいはあってもよさそうだ。
それにあの時の佑月は、事務所に立ち寄った客がいないかをかなり気にしていたため、客じゃなかったにしろ、老人がいたら直ぐ分かってただろう。
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