255 / 444

トラブル 11

「そのアドレスはいわゆる闇サイトのもの。そこに記した手順でいけば大丈夫だけど、あまりお勧めはしないよ」 「そうですか……分かりました。わざわざ調べて頂いてありがとうございます」  お勧めは出来ないが、こうして教えてくれる。それはきっと佑月が黙ってる性格ではないと知っているから。佑月の性格を見抜かれているのもあるだろうが、須藤からもある程度、聞いてるのかもしれない。  いずれにしろ、中村はわざわざリスクもあるだろう情報をくれたわけだ。これを無駄にするわけにはいかない。もしかしたら空振りに終わるかもしれないが、何もしないよりは断然いいはずだ。 「成海くん……もしかして会うつもりでいるのかな?」  佑月の考えを見透かした中村の問い。佑月は一瞬どう答えようかと迷ったが、嘘をついてもどうせバレてしまう。なら、正直に答えるしかなかった。 「……はい、そのつもりです」  答える佑月に中村は「あぁ……やっぱりそうだよね」と苦笑する。 「でもね、もしかしたら会うのは難しいかもね。奴は〝リスク〟を嫌う。スリルを味わいながらスリをしているワケじゃないからな。奴はそれを仕事としているからね」 「そうですよね……」  佑月は落胆の色を、海斗と二人揃って見せてしまう。 「カラスはどんなに金を積まれても、自分に不利益なると判断すると、スッパリと断る。嗅覚がいいとも言うのか。客を慎重に選んでる」  それを仕事としているなら、そうせざるを得ないのだろう。捕まってしまっては生計が成り立たなくなるから。 「でも、まあ……」と、中村は佑月と海斗の顔を交互に見る。そして佑月たちの決意の顔を見て、仕方なさそうに笑った。  それから中村からは、充分に気を付けるようにと厳重な言葉をもらった。そして、何かあればいつでも協力するとまで言ってもらえ、佑月は心強い味方を得たのだった。

書籍の購入

ともだちにシェアしよう!