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接触 7

「あ、佑月先輩!」  佑月が頭を抱えたい気持ちで沈みかけていた時、双子が路地から現れた。 「陸斗、海斗、二人ともごめんね。ありがとう。なんとか無事に抜けてきたよ」 「良かったです」  二人は安堵の息をついて、佑月を挟んで歩き出す。 「で、どうでした?」  海斗が待ちきれないといった様子で尋ねてくる。 「うん。証拠はもらえなかったけど、彼は認めたよ」  佑月がそう答えると、二人は一瞬驚いた表情で口を開けていた。 「認めたって……本当ですか?」  陸斗は驚きを滲ませながら小声で問う。認めたとは流石に言い過ぎかもしれない。佑月の勝手な解釈もあるために。だがカラスは否定するということはしなかった。いくらでも誤魔化せる立場にいながら、それをしなかったのは、認めたと考えてもいいと言うことだ。 「うん。ただ、それを届け先である彼らに、証拠としては提示は出来ないんだけどね。俺としてはそれよりも真実が重要だったから」  佑月が海斗の肩を軽く叩くと、海斗は「ありがとうございます」と途端に泣きそうに顔を歪めた。これで海斗に重くのし掛かっていた肩の荷は、少しでも下りたのではないだろうか。 「カラスがどういうつもりなのかはさておき、これで今回の依頼はただの依頼じゃなかったって事が分かりましたね」 「うん。それはまた事務所に帰ったらゆっくりと話すよ」 (狙いはきっと俺だ)  メンバーを巻き込むことはしたくなかったが、もう巻き込んでしまった。きっと、彼らの協力は(のち)に必要にもなってくるだろう。  そしていずれ須藤にも話さないといけなくなるだろう。佑月はこの先を(うれ)いて、重いため息をこっそりと吐いた──。

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