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《Background》 2

 画面を見ると、適当な文字の羅列が並んでいる。須藤の名簿は佑月以外は暗号化された名前を使ってる。 「泰然(タイラン)か」 『はい。ご無沙汰してます。やっと繋がって良かったです』  ホッとしたような声音は、流暢な日本語だが発音が少しばかり違う。 「さっきまで所用があったからな」 『相変わらずお忙しそうですね』  クスクスと笑う声が聞こえるが、直ぐに本題に入らない泰然(タイラン)に須藤は「何かあったのか」と先を促す。 『はい、実は今日、須藤さんの愛人(あいれん)に会いました』  愛人は中国では妻や夫という意味だ。須藤は泰然の言葉に、眉間に深いシワを刻む。 「どういうことだ?」  その声音は周囲に人がいれば縮こまるほどの低音。そのため真山が心配そうに、ルームミラー越しから視線を寄越している。 『私にある依頼がありまして、男から封筒をすり替えて欲しいというものだったんですが、その件に成海さんが関わってることを昨日知りました。成海さんは〝ある筋〟から私に辿り着いたようで、今日会うことになったのです。ですが、厄介事に巻き込まれるのは避けられないかと……』  須藤は回りくどい説明を嫌う。そのため端的にスマートに話さなければならない。  だが今は、須藤の愛人が絡んでる話。なぜ佑月と会うことになったのかを先ず説明しなければならないと、泰然はよく心得ていた。 「まだそんなお遊びめいた事をしていたのか。確か、依頼人とは直接会わないんだったな」 『ええ、なかなか愉しいのでやめられません。須藤さんのおっしゃる通り、依頼人とは会いません。仲介がいますので』  泰然はblack birdとして、ネット上で仕事を請け負っているが、依頼人とは直接会うことはない。仲介人が依頼人に会っている。  だから今回に佑月が絡んでいることを、昨日のネットのやり取りまで泰然は知らなかったのだ。佑月の名前を知った時は正直に驚いていた泰然だったが、相手が須藤の愛人なら一度は会ってみたいと純粋な興味があった。

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