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《Background》 3

 会えばなるほど、須藤が夢中になってるのがよく分かった。 目を奪われるほどの美しすぎる容貌、そして色気。見た目から、女のように儚げかと思いきや、男らしく力強い目力というものに佑月の本質が見てとれた。  須藤の愛人でなければ、手に入れたいとさえ頭に過ったのは、絶対に漏らせないことだった。 『須藤さん、調べましょうか?』 「いつ分かる?」 『明日には』 「そうか。分かったら直ぐに連絡しろ」 『知道了(了解しました)』  black birdとしての名が裏社会に浸透はしているが、泰然(タイラン)の本当の姿はごくごく一部の人間しか知らない。 同郷の人間ならその名を聞いただけで、マフィアさえも関わりを避けるほどだ。  須藤はスマホを上着のポケットに入れると、今はベッドの中であろう佑月に思いを馳せる。 「あいつはいつも俺を頼らないな」 「成海さんですか?」  須藤の呟きに、真山はすかさず反応する。 「あぁ……」  佑月のためなら何だってしてやるし、時間も作るというのに、須藤に頼ることを嫌う。  堅気(かたぎ)の道を歩く者にとっては、真っ当な思考だとは分かってはいるが、面白くないと思うのも事実だった。 「でもそれが成海さんらしいですね」  真山が愉しそうに言うのを、須藤は肯定を無言で返した。 真山自身が、佑月のことを気に入っているのを須藤は知っている。  仕事と須藤以外に何も興味を示さない男が、佑月に関しては特別視している。滝川もその一人だ。  自分の恋人だからというわけでもなさそうなのが、須藤は少し気に入らない。佑月はあらゆる人間を魅了し、本人の意思に関係なく老若男女を惹き付ける。  佑月が他の男に目を向けることは絶対にないと分かっていても、時々本当に監禁して他の人間から隔離したくなるのだ。 「真山、佑月に一人つけておけ」 「かしこまりました」  村山の件が片付いた時は、一旦佑月の監視は外していた。だが、再びきな臭い状況に付けておいた方がいいと須藤は判断した。

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