267 / 444

《Background》 4

「それと、黒衿(こくえ)会の件ですが、小寺が後任についたようです」 「小寺か。黒衿も焼きが回ったな」  黒衿会は村山が生きていた頃は、頭脳で上手く収益を得ていた。そのお陰で組全体がかなり潤い、会長の渡辺もさぞ有意義な日々を過ごしていただろう。  だが、その村山は殺された。小寺の直の若い舎弟が殺したことで、小寺に疑いの目が向いたが、内部調査なので舎弟が独断でやったことで落ち着いた。だからと言って小寺の疑惑が綺麗に晴れたとは言い難いが、それは仕方ないことだろう。本来、やくざの世界では上にいる者には絶対の服従を約束させられる。  上が黒と言えば、白い物でも黒と言わなければならない。だから、例え小寺に村山を殺せと命令されていたとしても、口外することは出来ないからだ。  そしてその実行犯であった舎弟は、処分と言う名のもとで消された。 黒衿会の中では終わったことだが、本当の真実というものは、黒衿の人間は誰も知らない。死んだ舎弟以外は。 「よく喋らなかったもんだ」  感心して言ったのではなく、嘲笑する須藤に真山も頷く。  黒衿会の殺された男は、運び屋であるリアンと関係があった。組を(あざむ)いてまで真実を語らなかったのは、リアンに相当惚れ込んでいたのか、それとも何か弱みでも握られていたのかは分からない。だが、男は直の上司である小寺さえにも、リアンの名を口にはしなかった。  そもそもの発端は、リアンが村山を挑発したことから始まった。情報屋の報せで、佑月が襲われる前、中村が経営するバーespoirの店先でリアンと村山が接触していたのが分かった。  そして須藤はespoirに赴き、店先に取り付けてある防犯カメラを、中村の協力のもと確認をした。話してる内容もしっかりと録れていた。

書籍の購入

ともだちにシェアしよう!