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最悪の 10

 佑月は軽く息をついて、車に近付く。 「乗れ」  後部座席の奥で、不機嫌なオーラを放つ男が乗車を促してくる。久しぶりに会うというのに、再び出そうになるため息を堪えて、佑月は真山に軽く頭を下げてから乗り込んだ。  乗り込めば、そこは既に運転席とは隔離された空間になっていた。  右隣から発せられる怒りを含んだ気は、今会っていた人間が誰かを知ってるということだろう。でなければ、こんな所に現れないだろうし、怒ることもないだろうから。 「また俺に見張り付けたんですか?」 「会ってたのは円城寺か」  佑月の質問には答えず、やはりと言うか、須藤には隠し事が出来ないと実感する瞬間だった。 「……別に会いたくて会ってたわけじゃないけど」 「なら、今後二度と会うな」 「……」  厳しい口調の須藤に、佑月は一瞬口を閉ざす。だけど今は須藤に従うことは出来ない。 「その前に話したい事があるんだけど……」 「話をすり替えるな。会うなと言ってるんだ。ちゃんと返事をしろ」 「だから、その前にこっちの話を聞いてくれって言ってるだけだろ。頭ごなしにあれするな、これはしろって命令しないでくれよ……」  円城寺の対面での緊張と苛立ちのせいで、思わず口調が刺々しいものになってしまった。そのせいで冷たく重い空気が、より一層車内に張り詰めていく。 「お前の話を聞いたところで、どうせろくでもないことだろうが」 「……確かにいい話ではないですけど、でも黙ってたらあんた怒るだろ?」 「当たり前だ」 「だから聞いてほしいんだよ」  暫く睨み合いをしていると、須藤が呆れたように溜め息を吐く。それを了承と取って、佑月は今回のこと、今後のことを、長い時間をかけて詳細に話して聞かせた。だが、話し終えると須藤は「話しにならん」と突っぱねる。 「あんな男に関わるな。放っておけばいい」  佑月とて、あんな男放っておけるものなら放っておきたい。でも、それでは駄目なのだ。今回で決着をつけないと、いつまでも安息は訪れない。  それに、やっぱりアイツらのことは許せない。大切なメンバーを巻き込んだことが、佑月にとっては許せないことだった。

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