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最悪の 11
「……俺は決めたんだ……。だから、お願いします」
あの男には、何も出来ず屈することしか出来なかったあの頃の俺ではないということを、知らしめたいという思いが佑月にはある。
その為には須藤の理解が必要なのだ。だが返ってくる須藤の言葉は厳しいものだった。
それから何度となく車内で、須藤に懇願したが、聞き入れてくれることなく、ずっと黙されていた。
車が須藤のマンションに着くと、真山が開けるよりも速く、須藤自らドアを開けた。そして、無言で佑月の手首を引っ張り車外に出す。
それを佑月は振り払おうとするが、もちろんそれが解かれることはない。
「須藤さん、話を聞いてくれないなら、俺は帰ります!」
足を踏ん張る佑月を容赦なく引っ張る須藤。
力で勝てないから、ズルズルとエントランスへと引きずられていく。
「聞いてるんですか!? 俺は帰るって言ってるんだよ!」
「静かにしろ。お前を黙らせて連れていくことも出来るんだぞ」
佑月へと振り返り、佑月を見る須藤の目。それはまるで樹海のように、深く暗い闇。こんなに冷たい目を向けられるのは初めてで、佑月は出かけた言葉を飲み込むしかなかった。
「脱げ」
佑月をベッドルームに連れ込むや、須藤は開口一番にそう告げる。
「……嫌だ」
いやいやをするように佑月が首を振ると、須藤は佑月の腕を掴んで乱暴にベッドへと突き飛ばしてきた。
「っ……何する──いっ……」
起き上がろうとした佑月の動きを封じるように、須藤は太股の上に容赦なく腰を落とす。
そして佑月のネクタイは、音が出るくらいの勢いで抜かれる。須藤は暴れる佑月の両手首を頭上で束ね、片手でシーツに縫い付けた。
「……やめて……イヤだっ……ん」
強引に唇を重ねられ、佑月は顔を振るが、顎を固定されてそれを阻まれる。佑月の口内を蹂躙する舌。奪われるだけの行為に、佑月の気持ちはまるで入っていかない。
「ちょ……やめろって言ってるだろ!」
怒鳴る佑月にもお構い無しに、スーツ、ワイシャツのボタンを外し、須藤は胸の突起に舌を這わせてくる。
「イヤだって……お願いだから。今日はしたくないんだ。話しをしたいんだよ……」
「話は終わった」
「終わってない! 離せよ! したくないって言ってるだろ!」
悲鳴のような叫びになった佑月に、須藤はゆっくりと体を起こした。分かってくれたのかと思ったが、須藤の目を見て、佑月の気持ちは一気に沈んでいった。
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