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最悪の 12

 無感情な目。まるで虫けらでも見るかのような。こんな須藤に触れられるのは、佑月には耐えられなかった。 「なんで……。今日はしたくないってだけなのに」 「俺は毎日でもお前を抱きたいがな。もう十日以上は触れていない」 ──毎日でも抱きたい?   愛情さえも感じない目で言われても、何も響かない。 「……でも、今日はそんな気分になれない。ちゃんと須藤さんの理解を得たいから、話を──」 「何度も同じことを言わせるな」 「それなら俺は勝手にさせてもらうことに……いっ……何して……」  不意に須藤が、佑月の両手首を何かで縛り上げてきた。恐らく佑月のネクタイだろうが、きつく締め上げられ、かなりの痛みが襲う。 「痛い……何で縛るんだよ……。外してくれよ。だいたい須藤さんはズルい」 「何がずるい」  佑月のベルトが手際よく外され、必死に抵抗の意を込め身を捩るが、須藤の前では佑月はまるで赤子のようだ。 「半分は俺のことなのに、何も教えてくれない。 何か隠してるだろ──あっ……やめっ!」  一気に下着とスラックスを脱がされ、佑月だけがほぼ全裸の状態にされてしまう。  須藤は全く脱ぐ気がないのがありありと分かる程、ネクタイがきっちりと結ばれているため、余計に辛い。 「お願いだから、やめ……いっ……! 痛い……」  まだ何も慣らされていない場所に、無理やり指を捩じ込まれ、痛みが走った。 「イヤだって言ってるのに! こんなこと……っ!」  更に指を増やしてきたのか、痛みが増して、佑月は一瞬呼吸が出来なくなる。  涙が滲む目で睨み付ける先の須藤は、佑月の声など届いてないかのように、淡々と自身のスラックスのファスナーを開け、雄を取り出している。  こんな須藤が信じられなくて、信じたくなくて、佑月の胸は泣きそうなほどに痛んだ。 「……俺は……あんたにとって性の対象でしかないのか? 対等とまでは言わないけど……もう少し〝男〟として見てくれよ……。こんな……こんなのレイプと一緒だろ!」  佑月の叫びに須藤の眉が僅かに寄る。それは怒りからなのか、悲しみからなのかは、この時の佑月には判別出来なかった。 「くっ……う……」  佑月の苦悶に耐える呻き声が途切れることのない広い部屋。いつもの慣れ親しんだ部屋だというのに、今は寒々として温かみを一切感じない。  一言も声を出さない須藤が知らない男に見えて、余計に佑月の恐怖は募った。 「……お願いだ……こんなの……」  須藤の巧みな腰使いに揺さぶられる身体。  だがまるで頭と身体がバラバラになったかのように、次第に佑月の目には何も映らなくなっていった──。

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