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最悪の 15
「成海さん……私の口からお伝えすることになって申し訳ございません。それに……」
真山は心配そうに、佑月の全身へと視線を走らせる。佑月は一気に羞恥に襲われてしまう。
全身が見えているワケではないから、普通ならただセックスをしただけだと映るはず。
だが真山の表情は、まるで自分のことのように痛ましげなものだった。きっと真山のことだから、全て周知のことなのだろう。
少しの居心地悪さを感じながらも、佑月は真山に笑みを向けた。
「こんなこと……何でもないです」
ヘラと佑月が笑うと、真山は釣られたように、少しの笑みを見せた。
正直真山が来てくれなかったら、佑月は結構な勢いで落ち込んでいただろう。あんな強引なことをされたが、怒りよりもショックの方が大きかったから。
「成海さん、今夜はごゆっくりとお休みになってください。また朝にお迎えに参りますので」
「……はい。ご迷惑お掛けしますが、宜しくお願いします」
ベッドから少し上半身を起こして、佑月は頭を下げた。
真山は返事の代わりに微笑を浮かべてから頭を下げ、一旦帰って行った。
わざわざ自分の為に、時間を割いてくれる真山に申し訳ない気持ちで一杯だったが、これも須藤からの命令だろうから、素直に従っていた方がいいだろう。
色々と複雑な心境ではあるが……。
「仕方ないよな……」
ため息とともに呟いてから重い瞼を閉じると、少しの安堵と疲弊からか、佑月は直ぐに意識を手放していた。
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