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最悪の 18
「そう言えば佑月先輩」
「ん?」
陸斗の声に顔を上げると、丁度花がお茶をガラステーブルに並べているところだった。
「花ちゃんありがとう」
「いえ! 海斗らも座って」
「おう、サンキュー」
四人とも来客用ソファに座り、佑月は改めて陸斗に声をかけた。
「陸斗何だった?」
「いえ、その、ちょっと気になってることがあって」
「気になること?」
「はい……」
陸斗が少し視線を横に流すと、佑月も釣られるように視線を流した。が、直ぐにお互いの視線が戻った。
「いやぁ……あの須藤さんがよく許してくれたなぁと思って……」
「確かに、あの人が簡単に容認するとは思えないっすもんね」
二人の言葉に佑月には苦笑が浮かぶ。
「うん……実は、本当言うと許してはもらえてないんだよ」
「えー! そうなんですか!?」
大仰と言ってもいいほどなリアクションの花に、佑月はこくりと頷いた。
「めちゃくちゃ反対されて、怒らせてしまったし……」
あんな強姦紛いな真似までされてしまった。
まだしつこい程の腰のダルさと、後ろの痛みが、あの場面を思い出させ、辛さに唇を噛んだ。
「え? え? じゃあ須藤さんとは……?」
もう今では三人の中で、須藤はただの他人ではないようで、心底に心配しているのが分かる。
「うん……。許してもらえないなら、傍にはいられないから……」
「え……? それって……」
花は最後まで言葉を紡げず、一気に辺りは気まずい雰囲気になってしまう。佑月はそれを払拭するように、三人に微笑んだ。
「まっ、仕方ないよ。お互いに譲れないものがあることは、分かってたことだし。いずれこうなるとも思ってたから。さっ、そろそろ仕事入らなくちゃならないから、みんな用意して」
「はい。またゆっくり話聞かせて下さいね」
花の少し元気のない声。
佑月が頷いてからソファから腰を上げると、三人も佑月へと頷いてから腰を上げた。
普通なら、心配してくれているのに、強引に話を切り上げてしまうのはどうかと思うだろう。だが、その訳を知っている【J.O.A.T】のメンバーが、深くは追及してこないことを知っているため、佑月は直ぐに仕事の準備を進めた。
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